カラダ覆う筋膜ほぐすストレッチ 冬の腰痛も遠ざける
冬場の冷えに加え、年末は大掃除など腰に負担のかかる機会が多くなる。運動不足で全身を覆う筋膜が硬くなっている人は特に注意が必要だ。コリをほぐす運動で腰痛を防ぎ、すっきりした体で新年を迎えたい。
腰痛の原因は、腰部の筋肉や関節、腱(けん)・靭帯の損傷だけでなく、筋膜の疲労・ダメージも大きく関係する。筋膜は筋肉と皮膚の間にあり、全身タイツのように体全体を覆っている。筋繊維や神経と連結して、力の伝達や姿勢を保つ役割を担っている。
デスクワークなどで同じ姿勢を長時間続けたり、水分不足やストレスがたまったりすることで、筋膜を形成している組織が絡まり弾性を損ねてしまう。筋膜は全身につながっているため、他の筋肉や筋繊維にまで動きの悪さが波及する。特に上半身と下半身をつなぐ腰部は、痛みや筋力の柔軟性の低下を招きやすい。柔軟な筋膜を保つために、手軽にできるストレッチをお勧めする。
まずはセルフチェック。リラックスした状態で息を吐きながら(1)前屈してみる。無理せず手先をどのあたりまで下げられるか試し、腰周りやお尻、太腿(もも)裏側の張り具合を確認しておく。続いて(2)足裏ほぐし。土踏まずにテニスボールなど球体のものをあてがい、心地よい程度に転がしてみる。足裏は全身を覆う筋膜の要の部分であり、ほぐす効果は大きい。
続いて立位でストレッチに入る。まずは(3)背中丸め&反らし。両膝の裏で手を組み背中から腰をつり上げるように丸める。その後に、両腕を挙上し軽く体を反らせる。
続いて(4)体側伸ばし。脚を前後に大きく開き前足側の手を椅子に添える。後ろ足側の腕を斜め上方に伸ばし、手先を遠くに引き出すようにしながらゆったりした呼吸を繰り返す。
絨毯(じゅうたん)やマットの上で行える場合は、(5)反らし&脱力お辞儀を試そう。軽く膝を開いた状態で膝立ちになり、腰の後ろに手を添えて、心地よい程度に身体を反らす。
その後で、脚を軽く開いて体の力を抜いて正座し、お辞儀するように腰を落とし込む。お尻を後ろに引くようにしながらリラックスするのがポイントだ。
次は(6)上体ひねり。両脚を伸ばして座って片膝を立て、その膝に肘をかけて上体をひねりつつ伸びあがる。余裕があれば(7)体側伸ばしにチャレンジしてみよう。
就寝前のくつろぎタイムには、(8)腿付け根・お尻ほぐしがお薦めだ。布団などの上でうつ伏せになって上体を起こし、片脚を内側に曲げながら腿の付け根を伸ばし、お尻をほぐす(左右15秒程度ずつ)。
最後は(9)お尻上げ。あおむけになって両膝を立てて、腰に手を添えてお尻を持ち上げる。無理なく身体を反らせてみよう。5秒程度で3回繰り返す。
いくつか試した後に、再び(1)の前屈でセルフチェック。筋膜がしっかりほぐれていれば、以前よりも深く前屈できるようになっていることが多い。日々の小まめな確認と対策で、有意義な年末年始を過ごそう。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2020年12月5日付]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。