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大泉洋の芸能事務所が経営 北海道産小麦100%のパン

日経MJ

北海道食材のカタログのような「ブーランジェリー コロン」(札幌市)
北海道食材のカタログのような「ブーランジェリー コロン」(札幌市)

札幌市の「ブラッスリー コロン ウィズ ル クルーゼ」は、同店の塚田宏幸シェフが自ら北海道内の生産者と連絡を取り、旬の食材の魅力や背景までも表現する「農が見えるレストラン」として、関係者の間ではちょっとした話題になっている。さらに驚くのは、同店を運営しているのが2020年年末のNHK紅白歌合戦で司会を務める俳優の大泉洋氏が所属する芸能プロダクション「クリエイティブオフィスキュー」であるということだ。

同店を運営しているのは、2020年年末のNHK紅白歌合戦で司会を務める俳優の大泉洋氏が所属する芸能プロダクション「クリエイティブオフィスキュー」と聞いて驚いた。

同プロダクションは所属アーティストのマネジメントだけでなく、いくつかの部門があり、その一つがベーカリー・レストラン事業コロン事業部だ。

こうした飲食事業の取り組みについて10月末に取材した。同社の伊藤亜由美社長は「きっかけのひとつは08年に北海道放送でスタートした『森崎博之のあぐり王国北海道』という道産の食材を紹介する番組です」と語る。

伊藤亜由美社長

当時、子育てをするなか、食材の豊かな北海道ですら、自分の子供と同世代の子供たちの食環境に乱れを感じ危機感を持ったという。「北海道の食材の素晴らしさを伝えたくてこの番組を企画しました」と伊藤社長。番組作りに携わるなかで、多くの価値のある食材に出合ったという。

さらに伊藤社長はテレビ以外でも北海道の魅力を発信したいと、「しあわせのパン」「ぶどうのなみだ」「そらのレストラン」という北海道3部作の映画を企画。それらを通じてパン・ワイン・チーズを楽しむ新たな北海道の食文化を提案した。

北海道洞爺湖を舞台に、ベーカリーカフェを営む夫婦を題材にした映画「しあわせのパン(主演大泉洋)」の公開後、北海道小麦のおいしさを直接消費者に伝えるべく直営のベーカリー「Boulangerie coron(ブーランジェリー コロン)」を開業した。

「当時、道産小麦は、パン職人から価格が高くて、扱いづらいといわれ、敬遠されていました。しかし、道産小麦は味に底力があり、おいしい。それを理解していただける方を探しているときに出会ったのがシニフィアン シニフィエの志賀勝栄シェフでした」と伊藤社長。

業界屈指のパン職人・志賀氏をグランシェフを招き、同氏の弟子にあたるパン職人も迎え入れた。その努力が実り、「ブーランジェリー コロン」のブランドは道産小麦100%のパンにこだわり、8周年を迎え、札幌市内に3店舗を展開している。

「ブーランジェリー コロン」のパンには小麦だけでなく、道内で生産される多様な食材が使われており、まるで食材カタログのようで楽しい。情報発信だけでなく、消費拡大につなげる行動力はさすがだ。

伊藤社長の考えに触れ、並々ならぬ北海道愛を感じた。伊藤社長は「エンタメも食も人の心を動かし、『感動』を届けることを大切にしています。飲食店のメニュー開発や自社イベントの企画に際しても、お客様の心を動かす力があるかどうかを念頭に置いて取り組んでいる」と話す。

エンタメも食も新型コロナウイルスの影響を受けている現在、信念のある発信には人を動かす力があると感じた。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。おいしいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“おいしい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出合った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2020年12月4日付]

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