鮮やかな赤身にきめ細かいさし 佐賀牛、極上のうまみ

2020/12/3
「季楽」では年に何度か特上肉が入荷する
「季楽」では年に何度か特上肉が入荷する

最高級の品質を誇る佐賀県の黒毛和牛「佐賀牛」。鮮やかな赤身にきめ細かい脂のさしが入った肉は「艶さし」と賞され、極上のうまみと風味が口内に広がる。国内外に販路を広げているほか、佐賀を代表するグルメとして観光客の人気も根強い。

「佐賀は牛を肥育する最高の環境がそろう」。佐賀県農業協同組合(JAさが)の真崎泰孝畜産部次長は胸を張る。穏やかな気候が牛を健やかに育み、きれいな水と肥沃な大地が肉質を磨く。コメどころだけに上質な稲わらも豊富だ。食べた牛は消化器官が強くなり、丈夫で大きく育つ。

肥育農家も研究熱心だ。飼料の配合で試行錯誤を繰り返し、品質を向上させた。1984年から佐賀牛として販売すると、販路は全国に拡大。2000年代には輸出も始まり、日本を代表する和牛の地位を確立した。

佐賀牛は高値が付く大阪など都市部を中心に出荷され、県内では出回らなかった。知名度が上がるにつれ、地元から「食べたい」という要望が強まった。こうした声に応え、安心して味わえる場所をつくろうと、JAさがグループ直営の佐賀牛レストラン「季楽(きら)」(佐賀市)が1993年に開店した。

「焼肉 明月館」の特上ロースは厚切り

ステーキに焼きしゃぶ、せいろ蒸しと素材を堪能できる料理がそろう。肉質を競うコンクールで表彰されるような特上肉も年に何度か入荷。吉村隆店長は「スペシャルな肉でも赤字覚悟の価格で提供している。肥育農家の愛情と情熱が詰まった肉を多くの人に食べてほしい」と話す。

70年に創業した「焼肉 明月館」(同)も佐賀牛にこだわる老舗。焼き肉に適した部位の肩ロースを使う。運営会社の尹学社長は「佐賀牛の良い部位を安定して仕入れられる店は地元で少ない。卸先と古くから取引しているからできる」と説明する。

「カイロ堂」が販売する佐賀牛の駅弁

特上カルビは薄切り、特上ロースは厚切りとそれぞれの肉に合う切り方で提供。高価な佐賀牛を抑えた価格で仕入れるため、同店の平均客単価は6000~7000円という。尹社長は「お客さんに『この値段で佐賀牛が食べられるのか』と喜んでもらえる」と語る。

佐賀牛の駅弁もある。JR武雄温泉駅(佐賀県武雄市)の構内にある「カイロ堂」は「佐賀牛すき焼き弁当」「佐賀牛極上カルビ焼肉弁当」を販売。調理にこだわり、ともにJR九州の九州駅弁グランプリで1位に輝いた。良質の肉を気軽に食べられ、ロングセラー商品になっている。

<マメ知識>認定基準 群抜く厳しさ
全国の銘柄牛の中でも佐賀牛の認定基準はトップクラスの厳しさで知られる。肉の色沢など4項目で評価する肉質等級で最高の5等級になったものや、4等級でもさしの入りがきめ細かいものだけが佐賀牛として認められる。基準を満たさないものは佐賀産和牛と区別される。こうした基準が品質への信頼を生んだ。佐賀牛と命名した1984年の出荷頭数は1万3280頭だったが、その後は年々拡大し、ピーク時の2011年には2万3178頭を数えた。近年は農家の高齢化や後継者不足が課題になっている。

(佐賀支局長 諸岡良宣)

[日本経済新聞夕刊2020年12月3日付]