ハノイ、エッグコーヒー140円 苦さと歴史香り立つ

日経MJ

ひまわりの種を食べながらコーヒーを飲むのがベトナム流だ(ハノイ市)
ひまわりの種を食べながらコーヒーを飲むのがベトナム流だ(ハノイ市)

ベトナムの首都、ハノイでエッグコーヒーを提供する「カフェジャン」。苦いコーヒーの上に卵黄とコンデンスミルクをクリーム状に泡立てた絶妙な味わいで人気を集める。国内外のメディアでも取り上げられる機会が増え、店内は観光客らでいつもにぎわっている。

ハノイ中心部の旧市街にある小さな店の薄暗い通路を奥に進むと、見慣れない飲み物を楽しむベトナム人らがいた。黄、黒の2層に分かれたエッグコーヒーをスプーンで混ぜて口に運ぶと濃厚な甘みとほろ苦い食感がやみつきになりそうだ。

南部の最大都市、ホーチミン市から出張で来たというブイ・ティ・フエン・チャンさん(28)は「エッグコーヒーを出す店の中でここが一番。出張時は必ず立ち寄りますよ」と太鼓判を押す。

エッグコーヒーの価格はアイス、ホットとも3万ドン(約140円)。ハノイの一般的な喫茶店のミルクコーヒーと差がなく良心的な値段設定だ。チョコや豆、シナモンを入れたメニューもある。新型コロナウイルスの影響で外国人は少ないが、週末には1日500人以上の客が来るという。

「カフェジャン」の創業は1946年。ハノイの高級ホテルで働いていた現オーナーのグエン・チー・ホアさん(65)の父が考案し、家族のみが秘伝のレシピを受け継いできた。18年に日本の横浜中華街にフランチャイズ店を出したが「味を守るためにそれ以外は店舗を広げない」という。

エッグコーヒーはベトナムでは知られていたが、より注目されるきっかけは19年2月にハノイで開かれたトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の会談だ。メディアセンターの特設店舗で国内外の記者らに合計3千杯が無料で振る舞われ、ユニークなコーヒーとして多くのメディアで紹介された。

ベトナムのコーヒーはフランスが占領を始めた1800年代後半に、輸出向けとして生産が本格化した。今では世界2位の輸出規模となり、ベトナム戦争を経て様々な文化と融合しながらカフェ文化も根付いた。コーヒーはベトナムの近代史そのもので、エッグコーヒーも歴史を物語る。

(ハノイ=大西智也)

[日経MJ 2020年11月30日付]