記者は小学生のころから工作が大の苦手。しからばと思いついたのが、往年の人気ロボット玩具「マジンガーZ」の超合金モデルの複製だ。

ただ、マジンガーZのコピーを紙面で紹介するとなると版元の了解が必要だ。著作権者に相談したが「3Dスキャナーでデータを取るのはダメ」と言われ断念。そこで思いついたのが能面だ。知人で能面作りを趣味にしている建築家の松原忠策さんに相談し、お手製のお面を借りた。

制作歴7年の松原さんはコンテストでの入選経験もある。松原さんが言うには「能面制作では室町時代の観阿弥・世阿弥らが確立した能面の形を忠実に後世の人が模倣してきた歴史がある」。「写し」というのだそうだ。

樹脂を積層して造形していく(作製途中の般若の面)=サンステラ提供

松原さんは代々受け継がれれてきた能面の断面図を見せてくれた。こうした設計図や本物を見ながら能面師は制作するのだという。

能面には著作権がないのか。著作権問題に詳しい弁護士の福井健策さん(骨董通り法律事務所)に聞くと、「著作権その他の権利が能面に発生する可能性はごく低い」との答えが返ってきた。

製作は3Dプリンター販売のサンステラ(東京・豊島)に依頼した。お面を3Dスキャナーで読み取りデータを作成。プリンターを設定してスタートボタンを押すだけ。しかし能面の形状が複雑なため、通常なら数時間で完成するところが16時間かかった。「手作りなのでデータ量が膨大」と同社部長の和田裕介さんは話すが、うり二つの複製品ができた。

松原さんに見せると、「色付けすれば本物そっくりになる」と感心することしきりだった。複製でも十分楽しいが、自前で3Dデータが作れるともっと楽しい創造的な世界が広がるのだろうな。

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SNS投稿 著作権に注意

3Dデータが豊富にある Thingiverseのサイト

3Dプリンターでも基本的に紙のプリンターと同じで、自分の楽しみのために複製(コピー)するなら違法性はない。著作権侵害など法的な問題が生じる可能性があるのは私的利用の範囲を超える利用だ。

例えば、無料ダウンロードサイトで取得した3Dデータでモノを作り、インスタグラムなどのSNS(交流サイト)で出所を明示せずに紹介した場合など、データの提供元からクレームがつく可能性がある。

「既存のデータを引っ張ってくる際は、利用規約や同意内容に抵触しないかよく注意して欲しい」と弁護士の福井健策さんは助言する。

(木ノ内敏久)

[NIKKEIプラス1 2020年11月28日付]

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