放っておくと肝臓がん 怖い脂肪肝、飲酒以外にも原因

NIKKEIプラス1

写真はイメージ=PIXTA
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進行すると肝硬変や肝臓がんにつながる「脂肪肝」がある。過剰な飲酒ではなく、肥満などで発症する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)だ。肝臓組織が「線維化」することが特徴で、早期発見で適切に対処したい。

肝臓に脂肪がたくさんたまった状態が脂肪肝だ。人間ドックの受診データから推測される国内の患者数は1000万~2000万人。かつては命にかかわることの少ない良性の病気と考えられてきたが、近年、その約10%が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を発症。放っておくと肝硬変、肝臓がんを発症することが分かってきた。

肝臓がん対策に関わる江口病院(佐賀県小城市)ロコメディカル総合研究所の江口有一郎所長は「C型肝炎ウイルスが原因の肝臓がんが減ったのに対し、NASHによる肝臓がんが増え続けており脅威に感じる」と指摘する。

NASHと、過剰飲酒などが要因になる通常の脂肪肝はどこが違うのか。江口所長は「肝臓では細胞が死んでは再生されることが繰り返されるが、NASHは再生後に火傷のケロイドのような硬い組織がたまり機能不全を起こす」と説明する。これが「肝線維化」と呼ばれるものだ。

九州大学病院肝臓・膵臓(すいぞう)・胆道内科の小川佳宏教授は「発症のメカニズムはよく分かっていないが、細胞に脂肪がたまりすぎることで細胞が死んで炎症が起こる。免疫細胞の性質も変わり組織の修復にかかわる線維化が暴走してしまう」と解説する。線維化した部分が直接がんの要因となるわけではないが、NASHへの移行の重要なサインだ。

NASHの背景には糖尿病、高血圧、脂質異常症といったメタボリックシンドロームなど生活習慣病も関わる。影響は全身に及び、肝臓がん以外のがん、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクも高める。

NASHから身を守るためには、肝臓の線維化を早期に発見することが大切だ。まずは一般クリニックでも行える腹部エコー検査で脂肪肝の有無を確かめること。体重が増えたり血中の脂質や血糖値の数値が気になりはじめたら「肝臓が心配なので」とかかりつけ医などに相談。年1回は腹部エコーを受けよう。

さらに健康診断で肝機能検査の異常が続く場合や、糖尿病、高血圧などがあれば、消化器の専門科で肝線維化の検査を受けることも検討する。超音波や磁気共鳴画像装置(MRI)を用いて肝臓の硬さを調べるエラストグラフィーや血液中の肝線維化マーカーを調べる検査がある。

小川教授は「線維化した肝臓を元に戻すことは難しいが、食事・運動療法で線維化の進行を食い止めることができる」と話す。江口所長も「脂質異常症や糖尿病の治療薬の一部に肝線維化を抑制する働きがあることが分かってきたが、その効果は生活改善におよばない」と指摘。暮らしの見直しが重要になる。

生活改善の第一は体重を落とすこと。肥満傾向の人は医師や管理栄養士と相談しながら半年で3~5%程度のペースで最終的に7~10%減量すると肝線維化を抑制できるという研究報告もある。

ウオーキングなどの運動習慣も欠かせないが、より有効なのは筋肉トレーニングだ。小川教授は「筋肉は第二の肝臓」と指摘する。筋肉には肝臓の代謝機能をサポートする働きがあり、スクワットや腹筋運動など手軽にできる筋トレで筋肉量を増やすことが肝機能の改善に役立つという。

生活改善はじっくり継続して取り組みたい。江口所長は「自分の生活スタイルを大きくかえることなく、どうすれば体重を落とせるか、筋力がついてくるか、自分で発見し効果を実感することが長続きのコツ」と助言する。

(ライター 荒川直樹)

[NIKKEIプラス1 2020年11月28日付]

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