来店客は商品を選びながら、バーで約150種類のウイスキーやニューヨークにちなんだオリジナルレシピのカクテル「マンハッタン」などを楽しむことができる。店舗の営業は午後8時までだが、バーは午前0時まで。ポール・スチュアートの店舗でバーを併設するのは日本初となる。

迫られるコロナ対応、ブランド再生に乗り出す

店舗のあり方をなぜ大きく変えたのか。三陽商会の厳しい状況と新型コロナウイルスによる消費行動の大きな変化が背景にある。

2021年2月期まで5期連続の最終赤字となる見通し。5月に就任した大江伸治社長のもと、リストラと事業の立て直しを急ぐ。ブランド再生は重要課題で、19年度の売上高が前年度比3%減となったポール・スチュアートもその対象だ。スーツ7万~20万円台、コート9万~19万円台が主要価格帯で、アパレル分野では特に競争が厳しい。

加えて今春以降の新型コロナ感染拡大で、消費者の購買行動は大きくネットにシフトした。こうした状況で三陽商会は来店の動機となる仕掛けを各旗艦店に取り入れる考え。「あくまで店舗が中心だが、独自の価値を持たせなければ勝ち残れない」(大江社長)。

青山本店では品ぞろえにも特色を持たせている。同店限定となる2種類のPコート(15万4000円、22万円)は高品質なアルパカ素材などを使い、オリジナルデザインを採用。同じく限定品のウールカシミヤニットジャケット(5万9400円)は、リモートワークでの着用も想定し着やすさにもこだわった。

ターゲットとする中高年層は商品の選別も厳しく、新型コロナ以前から市場が縮小していたスーツなどは今後より落ち込みが大きくなる。同店では「着用シーンやニーズに合わせ、柔軟にオリジナルの商品を提案していく」(広報)考えだ。

新型コロナの第3波の懸念も高まる中、アパレル各社にとっては「厳冬」が長引きそうな状況。三陽商会が新たな旗艦店を軸にブランドの世界観を効果的に発信できるかが、浮沈のカギを握る。

(河野祥平)

ポール・スチュアートは1938年に米ニューヨークで誕生し、日本では75年に三井物産が輸入を開始、81年に1号店が表参道で開業した。三陽商会は91年から扱っている。三井物産は2012年に米ポール・スチュアートを買収しており、事業面での連携強化も今後の注目点になる。

[日経MJ 2020年11月20日付]


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