オンライン座禅会に参加 コロナで乱れた心身整える
以前から興味があった座禅。新型コロナウイルスの感染拡大に対応して、インターネットによる「オンライン座禅会」を開く寺が増えているという。良い機会なので、参加してみた。
オンライン座禅会は、ビデオ会議システム「Zoom」を使い開くのが一般的。画面を通じて禅僧が指導し、参加者は自宅などで座禅を組む。
10月中旬、曹洞宗の浅間山興教寺(こうきょうじ)(神奈川県厚木市)が開くオンライン座禅会に参加した。自宅の和室にパソコンを持ち込み、座禅で使う坐蒲(ざふ)の代わりに座布団を二つ折りにして腰を下ろす。
参加者は6人。午後9時、副住職の浅摩泰真さんが画面に現れ、開始。初めに浅摩さんから法話があり、続いて参加者が座禅を組む。
作法はオンラインも同じ。足の組み方は結跏趺坐(けっかふざ)と呼ばれ、右の足を左の股の上に深くのせ、次に左の足を右の股にのせる。この姿勢を取るのは結構、きつい。早くも挫折しそうだ。
ありがたいことに、負担の少ない半跏趺坐(はんかふざ)という組み方がある。右の足を左の股の下に深く入れ、左の足を右の股に深くのせる。「無理をしないで」という浅摩さんの言葉に甘え、半跏趺坐にする。
手の組み方は法界定印(ほっかいじょういん)といい、右手が下、左手が上になるように指と指を重ね、親指を自然に合わせる。組み合わせた手は下腹部のところにつける。
背筋をまっすぐに伸ばし、顎を引き、両肩の力を抜く。耳と肩、鼻とへそが垂直になるようにして、前後左右に傾かないようにする。
曹洞宗は壁に向かって組む座禅。パソコンを脇に置き、目を半眼(はんがん)にして、視線を約1メートル前方、約45度下に落とす。大きく深呼吸し、その後は鼻から呼吸する。約20分間、ひたすら心を無にする。
5分、10分……。何も考えないのは思いのほか難しい、雑念が次々にわいてくる。
浅摩さんは「浮かんできたことを追いかけない」のがポイントだという。例えば、夕食は何にしようかと思ったら、そこで止め、ハンバーグにしようかなどと展開しない。
チーンという鐘の音で終了。1回の座禅は、長い線香が燃え尽きる時間(40分)を意味する一●(火へんに主)(いっちゅう)が目安という。心地良かった。
続いて体験したのは臨済宗大本山円覚寺(神奈川県鎌倉市)の僧侶、内田一道さんによるオンライン座禅会。約50人が参加した。
座禅中に相変わらず雑念が浮かんでくるが、かなり流せるようになってきた。隣室から漏れてくるテレビの音も「何の番組か」と考えることなく音が入ってくるだけだ。
ところが、日ごろの運動不足もあり、気がつくと猫背になっている。寺での座禅なら、こんなときは棒状の警策(きょうさく)で肩を打ってもらえるが、オンラインではそうはいかない。姿勢を正さなきゃと考えると、よけい心が乱れてしまう。自然に姿勢が取れるようになりたい。
会員制のオンライン座禅会にも参加した。僧侶の藤田一照さんが主催する「オンライン禅コミュニティ磨塼寺(ませんじ)」だ。
このオンライン座禅会は、体をほぐすところから始まる。座禅中に足が痛くなったら、我慢せずにゆっくりほどき、直ったら戻せばよいという。「人が持つ自己調整能力に任せるのが座禅の基本」(藤田さん)
オンライン座禅は場所を問わないのが利点で、車の中からスマホで参加した人もいた。座禅は1人でもできるが、オンライン座禅会なら画面に参加者の顔が見え、空気感を共有できる。リアルの座禅会に参加しているような連帯感が生まれた気がした。
オンライン座禅会に参加して心と体を解放する時間を過ごせた。コロナ終息後も需要があるのでは、と感じた。
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ストレス低下の研究成果も
座禅への関心が高まっている。駒沢大学仏教学部の石井清純教授によると、座禅で腹式呼吸をすると血圧が下がり、ストレス低下につながるとの研究成果が出ている。仕事に行く前や帰宅後に座禅を組むなど、「日常生活に座禅を取り入れる人は増えている」という。
心身を整える座禅は、「抱えている問題を解決することはできないかもしれないが、前に進む力にはなる」と石井教授は効用を説く。座禅の作法は宗派(曹洞宗、臨済宗など)や道場によって多少異なる。「オンラインも含めいくつか座禅会を体験してみて、自分に合うところを選ぶと良い」と勧める。
(大橋正也)
[NIKKEIプラス1 2020年11月14日付]
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