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病越え左手で弾く新作 ピアニスト舘野泉デビュー60年

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NIKKEI STYLE

フィンランドを拠点に活動するピアニストの舘野泉がデビュー60年の節目を迎えた。病を経て、左手のピアニストとして再起した舘野。音楽に対する情熱を、変わらず燃やし続けている。

舘野は6月、1枚のCDを発売した。フランスの作曲家ショーソンによる「バイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲」。演奏したのは1959年、旧東京音楽学校奏楽堂。東京芸術大3年生だった舘野が妹でバイオリニストの舘野(鍋島)晶子や、弟でチェリストの舘野英司、後にバンベルク交響楽団の第1コンサートマスターを務めるバイオリニストの浦川宜也ら、仲間6人で奏でた。

友人がオープンリール機材で録音したものを、舘野が個人的にCDにして持っていたという。長く埋もれていたが、息子でバイオリニストのヤンネ舘野が発見し世に出ることとなった。

「学生時代から主流のドイツものにはあまり興味がなくて。ドビュッシー、ラヴェルといったフランス音楽が好きだった」。特にショーソンには思い入れがあった。「奔放で、夢があってロマンチック。ノーブル(高貴)でもある」

舘野の演奏生活は、その情熱を燃やし続けた60年だった。「その辺の植物でも、光に向かっていく。それと同じで、大好きなものにはどんなに苦労しても突き進んでいくという思いしかなかった。単純なんです」

運命への信頼感

東京芸大卒業後、欧州に渡り、ほれ込んだフィンランドで1964年から暮らす。演奏する作品も、大好きなものばかりを選んだ。例えばベートーベン。多くの演奏会を飾るピアノ・ソナタ第14番「月光」、第23番「熱情」などは「みんな嫌い。弾いていてちっとも面白くない」とにべもない。だが「第17番『テンペスト』なんかは好きで、いろんなところで弾いて録音もした」。

2002年、脳出血を起こし舞台上で倒れた。右半身がまひし、以前のようにピアノを弾けなくなった。しかし絶望感に打ちひしがれることは全くなかった。「『また音楽に戻るんだ』と漠然とでも信じられた。自分の運命に対する信頼感があった」と振り返る。「子どもの頃から、失敗やうまくいかないことがあっても翌日には忘れるような性格だったからね」と笑う。

それから2年ほど後、息子のヤンネが自宅のピアノに1つの譜面を置いた。英国の作曲家ブリッジによる「左手のための3つのインプロヴィゼーション」。それを見て「2、3秒の間に『左手で弾けばいいんだ』と気付いた」。直後に作曲家の間宮芳生に左手作品を依頼。復帰演奏会を開いた。この2年間のブランクは「生まれ変わるために必要な時間だった」という。

作曲家に提案

左手のためのピアノ作品は多い。昔からある左手作品を渉猟し、80ほどの楽譜を集めた。だが「その中で自分が弾きたいと思った曲は3曲ぐらいしかなかった」。好きになれる曲を自ら依頼するようになった。

各地で開催中の60周年記念公演でも、演目の大半が新作だ。光永浩一郎は「サムライ」という曲を献呈されて以来、何度も演奏している作曲家。光永が新たに書いた「苦海浄土によせる」は、「第1楽章が苦しみの中から立ち上がる感じ。第2楽章は、喜びも悲しみも全部抱えて進むようなフーガが書かれている」。

第3楽章には「海と沈黙」という光永の別の作品に換え演奏する。「もともと書かれたものも見事。だけど本当に静かな、沈黙に力がある内面的な曲で音楽を閉じたい」。舘野らしい提案に作曲家も同意した。

アルゼンチン出身のパブロ・エスカンデもここ10年、舘野のために多くの作品を残す。新作の「悦楽の園」は、ヒエロニムス・ボスの三連祭壇画に想を得たもので「地獄と天国が表裏一体のような音楽」。このほか、新実徳英「夢の王国」も初演となる作品だ。

東京オペラシティ(東京・新宿)で公演する10日、84歳の誕生日を迎える。3曲とも「『こういうのを書いてくれ』と頼んだわけではないが、人生の縮図みたいな感じがする。60年でやってきたことが表れると思うので、楽しみ」と自らに期待をかける。「でもね、締めくくりとは言いたくない」。言葉に力を込めた。

(西原幹喜)

[日本経済新聞夕刊2020年11月9日付]

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