東大時代に挫折した『種の起源』 漫画でやっと腹落ち日本対がん協会会長 垣添忠生氏

垣添忠生氏と座右の書・愛読書
垣添忠生氏と座右の書・愛読書
大学で生物を学ぶようになったころ『方法序説』に出合い、これこそ真理追究の方法論だと確信した。
かきぞえ・ただお 1967年東大医学部卒。豊島病院などを経て国立がんセンター(現国立がん研究センター)中央病院長、総長など歴任。2007年から現職。

少年時代から生き物に興味をもち、中高では生物部に入っていました。チョウが好きで、雑木林でとってきたオオムラサキの卵や幼虫を家の庭で成虫に育てていたほどです。生物に対する関心から、医学の道へと進みました。生物学も医学も、すべては絶対に揺るがない真実から始まります。演繹(えんえき)的に考えを進めれば、どんな未知の物事も解明できるというルネ・デカルトの教えに共感を覚えました。

19世紀から現在に至る生物学の流れのなかで、基本になるものは2つあります。一つはチャールズ・ダーウィンが『種の起源』で唱えた進化論です。高校生の頃、初めて邦訳本を手にしましたが難解で読み通せませんでした。東大に進んでからも何度か挑戦しましたが、やはりだめでした。つい最近、『ダーウィン「種の起源」を漫画で読む』が出てようやく理解できました。

基本のもう一つはDNAの二重らせん構造です。ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックが、1953年に英科学誌「ネイチャー」に「DNAの構造」というわずか2ページの論文で発表しました。今も読むたびに、すごい発見だなと思います。

ぼうこうがんの研究と治療に没頭しながらも、読書の習慣は続けた。

がんセンターの病院長時代は早朝、電車内や始業前のオフィスで自分の専門外の論文を読むのが習慣でした。帰りは小説などの読書にあてました。患者さんの多くは年上で、人生経験も豊かです。死を目前にした人もおり、自分の臨床経験だけではとても向き合えません。友情、死、嫉妬、地位など人間の内面に光をあてるマルクス・アウレーリウスやフランシス・ベーコン、ウィリアム・シェークスピアなどの作品を通して自分を鍛えました。

この経験は新しく入ってくる看護師や医師にも伝えるようにしていました。毎年、スピーチする機会が何度もあったのですが、そのうちの1回は読書、歌舞伎、映画などに親しみ自分を高める努力をするように、という話をしました。なかでも読書は時間をとられず、しかも安上がりです。

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