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「鬼滅の刃」ヒットにみる 鬼の文化、ひそむ光と闇

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NIKKEI STYLE

鬼退治の漫画「鬼滅の刃」の累計発行部数は1億部を超え、映画も公開直後の興行収入が過去最高を記録した。鬼は疫病の象徴。コロナ禍で熱を帯びる鬼の光と闇を探った。

京都市郊外、叡山電鉄貴船口駅から歩いて30分、貴船神社は山の中にある。9月下旬の夜。川の音と虫の声だけが響く漆黒の闇を湿った空気が満たす。鬼と出合うならこんな夜、こんな場所だと思う。

京都には鬼の物語が多くある。貴船神社には、仕えた鬼の子孫が書いたとされる書物が残る。京都市にある国際日本文化研究センター名誉教授の小松和彦さんは「貴船は鬼が住む異界の雰囲気を色濃く感じられる場所」だという。

鬼は昔から疫病や災害のメタファーだった。祇園祭は疫病退散を願い、節分は鬼を邪悪の象徴と見立て外に追い払う行事だ。「人間が制御できない凶悪な力を鬼に背負わせ、排除することでカタルシスを得て不安を和らげるのが鬼の文化」(小松さん)

そして「制御できない恐怖をもたらすコロナはまさに鬼。恐怖や不安を浄化したい思いや、共存する方法の模索が、今は漫画やアニメなのかもしれない」とコロナ禍の鬼ブームの背景を分析する。

鬼文化は一方で負の側面を持つ。生身の人間を鬼として排除してきた歴史もある。権力者は敵対する勢力に「鬼」のレッテルを貼り、特定の職業を差別して権威を維持した。魔女狩りの「魔女」も、「鬼畜米英」も人間だ。

この「負の鬼文化」が今、表面化している。コロナの感染者を出した家に「出て行け」と紙を貼る行為が日本中で起きている。感染者を診る内科医が「恐怖が人の心に悪魔を生み、病気の被害者を加害者扱いする。コロナよりも怖い病では」と言っていた。

本来、不安を和らげるのが鬼の文化なのに「コロナに感染した友達さえ自分を脅かす鬼と見る人が増えている。そのとき、自分の心に鬼が生まれている。人間に鬼のレッテルを貼ると、人間同士が異質な鬼として対立する怖さがある」。小松さんは今の鬼ブームに少し不安を感じている。

鬼の代名詞である酒呑童子(しゅてんどうじ)でさえ、人間との共存を模索する例がある。新潟県最古の国上寺(こくじょうじ)(燕市)本堂には、同県ゆかりの僧侶、良寛や酒呑童子の半裸の姿を日本画の木村了子さんが描いた「イケメン官能絵巻」が外壁に掲げてある。

酒呑童子は京都の大江山で鬼の頭領になる前に、越後で生まれ国上寺で学んだ伝説がある。もの供養で知られ、最近では「ネット炎上」さえ供養の対象にする。だが、昨年官能絵巻を公開すると、市議会の一部から批判の声が上がり、自ら炎上騒ぎになった。

当の山田光哲住職は意に介さない。「注目されてよかった。本来、仏教美術はおおらかなもの。美少年と伝わる酒呑童子は悪の存在ではない」。同寺を訪れる人は昨年末までに3倍に増えた。酒呑童子絵巻の壮絶な最期と国上寺の呑気(のんき)な姿の対比がおもしろい。

新潟妖怪研究所所長の高橋郁丸さんは「鬼の伝説は、勝者の記録である歴史とは裏腹に敗者の物語が多い。新潟の酒呑童子は民衆の味方というイメージがある」と話す。

鬼瓦のように鬼の力を味方につけ人間を守る鬼文化もある。異形の鬼と村人が交流し共存した典型例が「泣いた赤鬼」。赤鬼が子供を見守る公園が東京都足立区にある。「舎人(とねり)いきいき公園」は「鬼公園」と呼ばれる。

「お菓子を食べながら鬼の上で女子会を楽しんでます」。小6の女子が楽しそうに言う。赤鬼の滑り台の周りで鬼ごっこが始まった。昭和の光景のようで、コロナを巡る心の鬼の話を少し忘れた。

「鬼滅の刃」は鬼にされた妹を兄が人間に戻す物語。鬼の力を持つ妹は兄と協力し、互いを守る共存の世界観が描かれる。疫病という「外側の鬼」の制御は難しいが、心に芽生える「内側の鬼」は抑えたい。映画を見ながら考えた。

◇  ◇  ◇

鬼の目にも涙

「ボクのおとうさんは桃太郎というやつに殺されました」。ポスターには赤鬼の子供が描かれ、その小さな目から涙があふれている。2013年度の日本新聞協会の新聞広告クリエーティブコンテストの最優秀賞作品だ。

ハッとする。勧善懲悪の桃太郎の物語を、退治された鬼の目線で見たことがなかったことに気が付かされるからだ。

ポスターには「一方的な『めでたし、めでたし』を、生まないために。広げよう、あなたがみている世界」というコピーも添えられている。鬼は自分の心にいないか? 非日常が日常化した今、改めてかみしめたい言葉である。

(大久保潤)

[NIKKEIプラス1 2020年11月7日付]

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