培った経験とデータ、最適の1足を選び出すアシックスウォーキング 上田容子さん

上田さんはデータと20年超の販売経験を生かして最適な1足を提案する
上田さんはデータと20年超の販売経験を生かして最適な1足を提案する

履いている靴を見ただけで足の形が分かるという、すご腕の販売員がいる。アシックスのシューズ直営店・アシックスウォーキングなんばウォーク店の店長・上田容子さんだ。上田さんは前職を含めて20年を超える販売経験と、最新の足形の3D計測を駆使しながら最適な1足を提案する。

アシックスウォーキングは主にビジネス・カジュアルシューズを取り扱う。最大の特徴は専用の測定機を使った足形3D測定。足幅や左右の傾きなどを数値化。平均との比較をグラフで見せ、足の特徴を踏まえて靴を選んでもらう。

計測は測定機がやってくれるので「それ自体は誰でもできる」(上田さん)。一方で重要なのはデータを元にどんな靴を提案できるかだ。一人ひとりに最適な1足を選ぶのは「靴を知っていなければできない」と上田さんは語る。

20年以上靴を販売してきた上田さんは「足を見ただけで大体の幅が分かる」という。歩く人の足を見れば傾き具合が分かるし、靴のしわから足の特徴がつかめる。靴べらの滑り具合で、靴が合っているか判断するのも可能だという。例えば、足幅が細い人には細めで足首のホールド力の強い靴を提案する。

上田さんは婦人靴の販売員として大阪の松坂屋で7年間働いた。そこでアシックスのブランド「ペダラ」に出合い、販売を担当。履きやすさや品質の良さから安心して勧められたという。あるとき、アシックスの直営店が神戸で開業するとの記事を目にし、心が揺れたものの「家から遠かったので転職は諦めた」。

アシックスとの“再会”は突然だった。結婚後に再び仕事を探していた2005年、手芸屋の採用面接の帰り道、たまたまアシックスの直営店「歩人館」を見かけた。「これだ」と思い、手芸屋の採用を断り、すぐに歩人館の販売員に。6年で店長に昇格すると、約10年間で大阪・なんばや、京都・四条、神戸・元町などの店舗で経験を積んだ。

長いキャリアの中で多くの顧客と接してきた。その中でも印象に残るのが、メンズスニーカーを履いていた外反母趾(ぼし)の女性だ。「足幅が広いので、レディースのおしゃれな靴が履けない」と困っていた。計測してみると、実はむしろ足幅が細いと判明。先入観から解放された女性は感動し、上田さんのファンになってくれ、東京在住ながら実家の神戸に帰るとき、わさわざ店舗に寄ってくれるという。

中には「買ったばかりなのに壊れた」と怒鳴り込んでくる人もいる。そんなときでも、上田さんは「チャンスだ」と思う。積極的に怒りに向き合うと、顧客の態度は軟化。「通ってくれるようになるのは、むしろそういう人の方が多い」と話す。

深い知識と誠実な接客姿勢が「この人に選んでもらえば大丈夫」という安心感を生む。上田さんは「シューズと接客が好き。ずっと販売を続けたい」と自信に満ちあふれた表情で話した。

(佐藤諒)

[日経MJ2020年11月2日付]

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