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日本の企業や個人にイノベーションの起こし方を具体的に説く本の刊行が相次いでいる

日本の企業や個人にイノベーションの起こし方を具体的に説く本の刊行が相次いでいる

イノベーションに焦点を当てる著作の人気は根強い。日本企業や個人がイノベーションを起こすための具体的な方法に踏み込んだ著作も増えている。

関西学院大学の玉田俊平太教授は『日本のイノベーションのジレンマ第2版』(翔泳社、2020年8月)で、「破壊的イノベーション」と呼ばれる現象が起きるメカニズムを解説し、具体策を示している。故クレイトン・クリステンセン米ハーバード大学教授から直接、教えを受けた著者は、新しいアイデアを生み出し、市場や社会で広く受け入れられてはじめてイノベーションと呼べるという。イノベーションの日本語訳は「技術革新」より、「創新普及」がふさわしいと提案する。

同書では様々なイノベーションの事例を紹介し、かつては破壊的イノベーションを起こしていた日本企業が、苦境に陥っている理由を解き明かした。初版(15年)に最新の事例や「両利きの経営」「デザイン思考」といった経営学の新たな知見を加え、内容を充実させている。

世界制覇のための事業計画書』(クロスメディア・パブリッシング、20年8月)は、実際に新たな事業を計画している人を主な読者として想定している。著者は昭和女子大学の湯川抗教授で、ICT(情報通信技術)やベンチャー企業をテーマに長年、研究してきた蓄積を生かし、経営学の理論やフレームワークを数多く紹介している。起業家の自伝や伝記、第三者による著作も参考にした。「アイデアをビジネスにする」「市場規模を考える」「資金を調達する」「組織を成長させる」といった各章には理論と実践のポイントが詰まっている。

福田慎一編『技術進歩と日本経済』(東京大学出版会、20年8月)は研究者による共著で、イノベーションが日本経済に与える影響を主にマクロの視点から分析している。広島大学の田中賢治客員教授は「日本経済におけるイノベーションの促進」の章で、日本では1990年代以降にイノベーションが停滞している背景に触れ、世界中がネットでつながる時代の「非連続的なイノベーション」に日本企業の組織が適応できていないと指摘する。日本企業は企業内部で製品の構成を変えながら新時代に対応してきたが、田中氏は「組織の枠を超えて経営資源を再配分する柔軟性」を日本企業に求めている。日本の企業や個人にもイノベーションを起こすチャンスは広がっている。

(編集委員 前田裕之)

[日本経済新聞2020年10月31日付]

日本のイノベーションのジレンマ 第2版

著者 : 玉田 俊平太
出版 : 翔泳社
価格 : 2,200 円(税込み)

世界制覇のための事業計画書

著者 : 湯川 抗
出版 : クロスメディア・パブリッシング
価格 : 2,178 円(税込み)

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