ステイホームで気になる生活音 カーテンの工夫で軽減
在宅勤務やステイホームで家にいる時間が増えた。足音やテレビの音、音楽などの生活音が近所迷惑になっていないか、気になる人も多いだろう。自宅でできる防音対策を教わった。
生活音は響きやすい。防音専門ピアリビング(福岡県宗像市)代表取締役で防音対策アドバイザーの室水房子さんは、「夜に働くなど生活習慣の多様化から、周囲の音が気になりやすい環境になった」と話す。最近ではビデオ会議などのために、静かな環境を整えたいといった声も多い。
音が響きやすい住宅事情もある。近年人気のフローリングの床は、物を落とした音や歩く音が反響しやすい。集合住宅では軽量化が進んで床や壁が薄くなっている物件も多く、斜め上など離れた部屋でも床や天井、壁などに反響して伝わることもある。
「カーペットやカーテンを使うだけでも、反響音は軽減する」と室水さんは話す。柔らかい素材は音を吸収する効果がある。布製のソファを置いたり、壁にクッション性のある壁紙シールを貼ったりするのも、吸音に役立つ。
大人の足音や子どもが跳ねる重い音は、低く鈍い音となって響く。床に防音マットやジョイントマットを敷いた上にカーペットを敷くと、音がより軽減される。部分的に敷けるタイルカーペットや置き畳も手軽で効果的だ。
あえて裾を長く 床に垂らし遮音
カーテンも厚手の素材や重層になった防音カーテンがいい。突っ張り棒などを使ってカーテンを3枚掛けにするなど布を重ねる工夫を。隙間から音が漏れないようにカーテンボックスやカーテンレールカバーを取り付けるのも手だ。日本インテリアコーディネーター協会(東京・新宿)会員の東千晴さんは、あえてカーテンの裾を10~30センチメートル長く床に垂らすことをすすめる。「遮音に加え窓が高く見える効果もある」そうだ。
テレビの音や冷蔵庫、洗濯機など家電の振動音は、床や壁から伝わりやすい。壁から離し、振動音には耐震マットや防振ゴムを敷く。盲点になりがちな騒音源が室外機。換気のために窓を開ける機会が増えているため、耳障りな音となって響く。土台に防振ゴムを敷いて抑えられる。
防音対策のために段ボールや梱包材を壁や窓に貼り付ける人もいるが、実は「ほとんど吸音、遮音効果は見込めない」(室水さん)そうだ。
レイアウト工夫 走り回りにくく
部屋のレイアウトも工夫したい。子どもの足音が気になる家は「部屋の真ん中にテーブルを置くなど、走り回りにくい配置に」(東さん)。隣家と近い壁からは、テレビやスピーカーを遠ざけて本棚などの家具を置く。壁掛けテレビの場合、「音はワイヤレススピーカーから出して、手元で聴くといい」(室水さん)。
ピアリビングに相談し、賃貸アパートの自室に防音対策をしている、東京都在住の田尻美羅乃さんを訪ねた。以前住んでいた木造アパートは「隣の部屋の住人がコップを机に置く音さえ聞こえた。こちらの音も筒抜けではないかと気をつかう生活が続いた」という。音楽活動をしており、自宅でも楽器を演奏したり歌ったりする機会があるため、引っ越しを機に本格的に防音対策に取り組んだ。
床に防音タイプのタイルカーペットを敷き、壁には厚さ5センチメートルの防音パネルを設置。声や音が漏れないようにドアには隙間テープを貼り、念を入れる。防音パネルは手ごろな大きさにカットされたもので、両面テープで壁に貼り付けたり、室内に簡単に柱を立てられる「ディアウォール」や突っ張り棒で支えたりして設置する。対面キッチンの開口部も、取っ手付きのパネルでふさげるようにした。
田尻さんが測定したところ「歌うときは70~80デシベルの音が出る。防音対策をして居室の扉を閉めると、扉の外では50デシベルほどに抑えられた。玄関から出ると全く聞こえなくなった」という。東京都では、一般的な住宅街の場合、昼間は55デシベル以下、夜間は45デシベル以下を望ましい環境基準としている。
防音対策にかけた費用は約35万円。「防音完備の賃貸ルームは家賃が高く、防音室を設置すれば100万円以上する。コスパはいい」と喜ぶ。
騒音トラブルの相談もよく受けるというピアリビングの室水さんは「ご近所付き合いのある家は苦情が少ない」と話す。お互いに配慮しつつ、挨拶など日々のコミュニケーションを忘れずにしたい。
(ライター 児玉 奈保美)
[NIKKEIプラス1 2020年10月31日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。