Men's Fashion

ザ・ノース・フェイス 3Dスキャンで自分だけの服

ブランド VIEWS

2020.11.14

ゴールドウインのアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」が顧客層の拡大を急いでいる。日常でも着られる機能性が高い商品などが支持され、アウトドアブームも追い風に順調に売り上げを伸ばしてきたが、新型コロナウイルスの影響で足元は厳しい。上級者から女性や子供向けまで、店ごとにコンセプトや品ぞろえを変える店舗戦略をさらに推し進め、新たなファンの獲得や顧客の裾野拡大につなげたい考えだ。




ウエアのカスタマイズを「ラボ」でチャレンジ

2019年11月に改装開業した渋谷パルコ(東京・渋谷)の2階に入る「ザ・ノース・フェイス ラボ」。レジの横にある小さなスペースがこの店舗の最大の特徴だ。体形を3Dスキャンするシステムを設置し、最適なサイズや好みの色など、顧客一人ひとりにあったジャケットが作れる。

同社で初めて導入したサービスで事前予約が必要。現在は7商品が対応し、表地やロゴなどの色の組み合わせを選べる。サイズも色もカスタムすると最も高い商品で12万1000円と高額だが、10月の予約枠は26日時点までで全てが埋まり、コロナ下でも好調という。

購入した男性(36)は「それだけを払う価値がある」と話す。20代前半から50代まで、幅広い年齢層に支持されている。

多様な店作りで客層を広げるゴールドウイン

ザ・ノース・フェイスはもともと画一的な店作りはしてこなかった。例えば、東京・原宿エリアで展開する5店舗は、女性、子供、上級者など、それぞれにコンセプトが異なる。品ぞろえはもちろん、女性向けは淡いピンクが中心、上級者向けは木材が基調など、内装もがらりと変わるのが特徴だ。

商品展開でも、日常着でも使える機能性が高いウエアから、妊婦向けやオフィスカジュアル向けなど様々なウエアを手がける。森光常務執行役員は「専門知識をもった従業員が接客し、顧客は目的別に店を選べるメリットがある」と語る。

こうした店作りを進めてきたとはいえ、「ラボ」は挑戦的な取り組みだった。3Dスキャンシステムの構築など技術的なハードルもあり、森常務執行役員は「以前からあるコンセプトの店をブラッシュアップする方が楽だった」と話す。しかし、最先端の技術を体験でき、顧客を飽きさせない試みをしたいとの考えから開店に踏み切り、店舗展開の幅を広げた。

「ラボ」の開店はコロナの前だったが、コロナ下ではこうした取り組みがより重要になる。ザ・ノース・フェイスを含むアウトドア関連ブランドの売り上げは20年3月期は前年同期比2割増の779億円。17年3月期から倍近くになり、ゴールドウインの連結売上高の約8割を占めた。

だが、コロナの影響が直撃した20年4~6月期は約3割減の100億円。他のブランドに比べて落ち込み幅は小さく、ストレッチ性のある機能性ウエアは在宅勤務でも支持されたとはいえ、巻き返しへの取り組みは不可欠だ。

森常務執行役員は「今後も新たなコンセプトの店作りを目指す」と語る。商品展開でも環境に配慮した商品を拡充する方針。現状25%の女性客比率を5年後には50%に高める目標を掲げるなど、さらなる浸透を目指す。

(片山志乃)

ザ・ノース・フェイスは1966年に米国で誕生。日本では1994年にゴールドウインが商標権を取得し、日本人の体形に合わせた商品展開を始めた。国内の販売商品はほぼ全て同社が企画する。マウンテンジャケット(5万5000円)やリュック「BCヒューズボックス2」(1万7600円)などロングセラー商品が多数ある。

[日経MJ 2020年10月30日付]

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