コロナ警戒、大規模ライブ再開 ドライブインで密回避
1万人級の観客を収容するドームやアリーナを会場にした音楽ライブが、新型コロナウイルス対策を踏まえ、徐々に再開している。だが収容人数は依然制限されており、採算はなお厳しい。
大阪府が事務局を務める「大阪文化芸術フェス」が11、12日、万博記念公園(大阪府吹田市)でイベント「OSAKA GENKi PARK」を開催した。コブクロら計46組が野外ライブに出演し、2日間で約4万人が訪れた。
シートで距離確保
来場者は事前にスマートフォンにアプリをダウンロードし、ウェブ上で熱が出ていないかなどを確認する問診表を提出した。ライブ会場では入場時に配るレジャーシートを敷いてもらい、ソーシャルディスタンス(社会的距離)が確保できるようにした。
新しい鑑賞スタイルも登場している。音楽専門チャンネルの運営やイベント企画などのスペースシャワーネットワークは9、10月に山梨県山中湖村で野外ステージに車を止めて楽しむ「DRIVE-IN LIVE "PARKED"」を開いた。こういった「ドライブインコンサート」は海外では一般的だが、日本では珍しい。同社は「観客は安全な距離を保ちながら楽しんでいた」と話す。
政府は9月19日、上限5000人としていたイベントの人数制限を撤廃。大規模ライブを開催しやすくなった。もっとも収容5000人までの施設ならば、クラシックのコンサートや演劇は満席にできるが、ロックやポップスは「大声での歓声・声援が想定される」として、会場規模にかかわらず50%の上限が維持された。
途絶えていた大規模ライブが続々と決まっている。日本武道館では29日に藤井風、30日にクレイジーケンバンドが公演。11月3日にはザ・イエロー・モンキーが東京ドームに登場する。
クレイジーケンバンドは2月以来の観客を入れたライブとなる。武道館は8000~1万人を収容できるが、公演を主催するホットスタッフ・プロモーションによると、客席の前後左右を空けて50%以下の観客数になるという。入場時の検温や消毒のほか、対面でのグッズ販売をやめる、入退場の動線を工夫し密集を避けるといった対策をとる。
政府が段階的にイベントの人数制限を緩和する中、主催者も慎重に大規模ライブの可能性を探ってきた。8月には人気ロックバンドの和楽器バンドが横浜市で2日間公演し、各日5000人を集めた。アリーナ級のコンサートは当面難しいのではと思われていた時期だけに、音楽関係者らから大きな反響があった。
地方公演の不振
少しずつ正常化への階段を上ってきたが、収益環境はなお厳しい。主催者団体のコンサートプロモーターズ協会(ACPC)の中西健夫会長は「アリーナ級では収容人数が半分以下なら大赤字だ」と話す。クラシックのコンサートや演劇で5000人超の会場を使う公演はほとんどない。実質、ロックやポップスだけ制限が続くことになる。
中西会長は「コロナ前ならジャンルで分けることに意味があったかもしれないが、ウィズコロナの時代は観客も大声を出さずに楽しんでいる」と指摘し、さらなる制限の緩和を訴える。
中西会長によると、制限緩和後も「チケットの売れ行きは例年の3分の1から5分の1程度。特に地方の公演が厳しい」とみる。「大規模なイベントを徐々に増やし、十分な感染症対策をとりながら知見を積み重ねたい」と業界全体で地道な努力を重ねていく考えだ。
(北村光)
[日本経済新聞夕刊2020年10月27日付]
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