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英国の離脱はEUの力を減殺し、EUのあり方を変質させる可能性がある イラスト・よしおか じゅんいち

英国の離脱はEUの力を減殺し、EUのあり方を変質させる可能性がある イラスト・よしおか じゅんいち

欧州連合(EU)をめぐる議論を大まかに振り返ると、1990年代末まではEUがどのように深化し、拡大していくのかという楽観論が大勢であったのに対し、2000年代に入って以降はEUがどうすれば、いつまで存続できるのかという悲観的な論調が目立つようになった。

ユーロ危機で、EUはギリシャにユーロ離脱の脅しをかけ、緊縮財政を強要して民衆の反発を買った。また、難民危機ではEU全体で難民受け入れを分担する仕組みの導入が、反リベラルで排外主義的なハンガリーなど中東欧諸国の拒否に遭う一方、難民が大量流入したドイツなどの西欧諸国では反移民・反EUを叫ぶポピュリスト政党が選挙で大幅に勢力を伸張させた。さらに、英国のEU脱退を思いとどまらせるため、キャメロン英首相(当時)に対し、統合の基本目標である「欧州諸民の一層緊密化する連合」(EU基本条約前文)からの適用除外を認めることさえ厭(いと)わなかったが、結局国民投票でブレグジットを止められなかった。そして、今年コロナ禍が欧州を襲っている。

財政同盟移行も

田中素香著『ユーロ危機とギリシャ反乱』(岩波新書・16年)は、ユーロ圏での財政移転制度(財政同盟)の構築が必要であるのに、ドイツなど北部欧州諸国が強硬に反対を続けていることを批判しつつ「賢明なヨーロッパ人はいずれその方向へ舵を切り替える必要性を認識することになろう」と予言していたが、それは他ならぬメルケル独首相であった。コロナ禍で深刻な打撃を受けたイタリアなどの南部欧州と、裕福な北部欧州との間で財政支援をめぐる亀裂が生じたところ、ドイツが財政緊縮派から財政移転派に転向してフランスと協力し、EU予算の増大と共同債の発行による欧州復興基金の形で財政移転への道を開いた。これによりEUが財政同盟へ移行する可能性さえ生まれている。また、各国政権のコロナ禍対応が国民の支持を受け、ドイツのための選択肢(AfD)やフランスのマリーヌ・ルペン率いる国民連合などの反EUポピュリスト政党に対する支持率は後退している。

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