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医療事故調査に病院の腰重く 導入5年、遺族に不信感

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NIKKEI STYLE

診療中の患者が予期せず死亡した場合に原因究明する医療事故調査制度で、医療機関からの報告件数が月20~40件で低迷している。遺族が調査を求めても医療機関が応じないケースがあるほか、第三者機関が「報告を推奨する」と助言しても3分の1は未報告だ。10月で導入5年。運用の改善を求める声が出ている。

大阪府吹田市の金坂真希さん(当時21)は2018年9月に大阪市内の病院で脳動静脈奇形の摘出手術を受ける前の処置で脳死状態となった。処置の前には受診のきっかけとなった頭痛はなくなっていた。意識を回復しないまま約1年後に亡くなった。

15年10月施行の改正医療法に基づく医療事故調査制度は予期せず患者が死亡した場合、医療機関が原因を究明することを定めている。

真希さんの主治医は「処置は無事成功した」と説明したが、母親の康子さん(60)は予期せぬ死亡として院内調査を求めた。病院側は「弁護士に委任している」とし、調査しているかどうか答えていない。生前、対応に不信感を抱いた家族が病院側を相手取り提訴しており、訴訟中であることも病院が答えない理由だ。

医療情報の公開・開示を求める市民の会(大阪市)の代表世話人、勝村久司さん(59)は「提訴やその可能性があることは調査しない理由にならない」と病院の対応を批判する。

制度開始直後の15年11月に初期の胃がん手術を受けた60代男性が死亡したケースは、病院が合併症による「予期された死亡」と判断した。不審に思った男性の妹が第三者機関「医療事故調査・支援センター」に指定されている日本医療安全調査機構(東京)に相談し、病院にも粘り強く交渉し、ようやく調査した。

病院は院内調査でも「術後の偶発症と合併症で不幸な転帰をたどった」との判断を覆さなかった。その後、同機構がまとめた報告書は病院側が望ましい判断や対応をしていなかったと指摘した。男性の妹は「調査してもらうまで大変苦労する。ほかにも調査をしてもらえず行き場のない人は多いだろう。何のために制度を作ったのか疑問を感じた」と振り返る。

制度は1999年以降に東京都立広尾病院などで相次いで明らかになった医療事故を受け、被害者だけでなく日本外科学会など20以上の学会も動いて創設された。個人の責任追及ではなく再発防止を目的とし、「医療界の自律性」を重視する考えから、調査するかの「最初の一歩」の判断は医療機関に委ねられた。

ところが調査されずに埋もれている医療事故は少なくない。

医療安全調査機構には医師や看護師ら複数による合議(センター合議)で医療事故の報告や院内調査の実施を推奨するか判断する仕組みがある。

16~19年の4年間に医療機関から「調査対象に当たるか」と助言を依頼され、センター合議で「事故として報告を推奨する」と回答したのは計144件。このうち20年1月時点で一部検討中を含めて47件は未報告のままだ。「報告推奨」か意見が分かれた69件では6割の42件が報告されていない。遺族側に調査対象とするかの判断結果を知らせる仕組みもない。

制度創設前には報告件数は「年1300~2千件」と推測されたが、実際は年400件弱が続く。制度創設から関わってきた同機構の木村壮介常務理事は「医療界の自律性が制度の根幹。第三者機関が調査を強制する形は望ましくない。強制すれば相談さえなくなってしまう」と苦悩する。

医療情報の公開・開示を求める市民の会は9月、制度開始5年を機に制度改善を求める要望書を厚生労働省に提出した。

要望書では遺族などの相談を受けて同機構がセンター合議を行った場合は、結果を遺族らに伝えることを盛り込んだ。報告を推奨したのに調査しなかった場合、機構が指導・勧告し、応じない医療機関名を公表できるようにすることも求めた。

医療の質・安全学会の長尾能雅理事長(名古屋大病院副院長)は「こうした要望書が出る前に医療界、行政は患者中心の視点で課題を考え、あるべき姿に近づける使命があったはず」と省みる。制度創設から5年を経ても「何を医療事故とするのか」という判断や調査手法が標準化されていないことが最大の課題と指摘し、「医療に事故やトラブルが避けられないならば、優先的に対策する内容を患者と医療者が一体となって考えるべきだ」と話す。

◇  ◇  ◇

医療機関から警察への届け出は減少

2015年10月に医療事故調査制度が導入され、医療機関が警察に医療事故を届け出る件数は大幅に減少した。14年には88件だったが、15年に47件と半減。16年以降も20~40件台で推移する。警察も制度による調査を尊重しており、事実上の受け皿になっている。

一方、遺族などからの警察への届け出は、制度開始前の14年は40件あったが、15年は14件に減った。18年は30件、19年は25件とやや増えつつある。

09年に始まった産科医療補償制度では、出産で乳児が重度の脳性まひになった場合、医療機関からの届け出を受け、第三者機関の日本医療機能評価機構(東京)が原因究明し、再発防止策を提言する。問題を繰り返す医師や医療機関には個別指導する。家族には保険方式で計3千万円が補償される。分娩機関(約3200施設)の99.9%が加入している。

医療訴訟の提訴は年700件超が続く中、約100件を占めた産婦人科関連の提訴は制度導入で半減した。医療情報の公開・開示を求める市民の会の勝村さんは「きちんと原因究明すれば患者・家族とのトラブルは減る。積極的に調査すべきだ」と強調する。

(社会保障エディター 前村聡)

[日本経済新聞朝刊2020年10月26日付]

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