きのこをおいしく調理 扱いひと工夫、食感生かす

三浦秀行撮影
三浦秀行撮影

日本に生息する野生のきのこのうち、食用は約100種類。晩夏から秋に収穫されるものが最も多いという。この機会にきのこの扱い方をおさらいしてみよう。

まずはきのこの選び方だ。新鮮なきのこはかさの部分にハリや弾力がある。また柄に黄ばみがなく、きれいな色をしているのが特徴だ。かさがしぼんでいたり、柄が黄ばんでいたりするものは鮮度が落ちているので避けよう。

栄養素守るため 水洗いせず調理

調理前に洗うべきか? 迷ったことのある人も多いだろう。きのこ生産大手ホクトの担当者は「洗わなくてよい」と説明する。スーパーなどで市販されているきのこは、施設内で生産しているものがほとんどで、衛生面の心配は少ない。「洗うことにより水溶性の栄養素が流れ出てしまいます。どうしても気になる場合は、固く絞った布巾などで拭いてから使用することをおすすめします」

新鮮なきのこは見るからにおいしそう。つい生で食べてみたくなるが、それはNGだ。ホクトによると「きのこに豊富な食物繊維など栄養素の一部は、生で食べると体調不良の原因になってしまう場合がある」という。しっかり火を通して食べよう。

ではおいしく調理するにはどんなコツがあるのだろうか。きのこにこだわるフランス料理店「マッシュルーム」(東京・渋谷)のオーナーシェフ、山岡昌治さんを訪ねた。

お店の定番メニュー「きのことドライフルーツのマリネ」「エノキのキッシュ」を作っていただきながら、調理のポイントを教わる。山岡さんが手に取ったのは、家庭でもよく使うエノキだ。市販のエノキやブナシメジの根元には、おがくずやぬかなどの「培地」がついている。

山岡さんが切り落とす培地はわずか1センチほど。「この部分を切りすぎて捨ててしまう人がいますが、もったいない」。ブナシメジであれば2センチ程度、根元がバラけない位置で培地を切り落とす。根元に残っている培地は、房をほぐしながら取り除けばよいという。マイタケも同様だ。「マイタケの硬い根元の部分はコリコリとしておいしいので、適当な大きさに切って調理するといい」

マリネには家庭向けにシイタケ、マッシュルーム、エリンギなど6種類のきのこを選んでもらった。色々な種類のきのこを混ぜることで、食感や味の違いが楽しめる。きのこは加熱すると縮むので、細かく切りすぎず、大きさはなるべくそろえよう。

水と油多く吸収 入れすぎに注意

きのこを炒め始める山岡さん。使う油は必要最低限だ。「きのこは油を吸う。カリッと仕上げるソテーなどには十分な油が必要だが、マリネは蓋をして加熱するので、鍋底に行き渡る程度で」。他の料理でも油の量には注意が必要だ。

油だけでなく水分も吸収しやすいため、調味料も入れすぎないようにしよう。きのこは加熱すると水分が抜けてかさが減るが、マリネなど汁に漬けておく料理では、再び水分を吸収する。「出来たては塩やレモン汁で控えめに調味し、冷蔵庫で数時間寝かせた後、もう一度調味するのがポイント」(山岡さん)

一見地味な食材のように思えるきのこだが、あわせる素材次第では、ホームパーティーにぴったりのおしゃれなメニューにもなる。山岡さんがマリネに加えたのはアンズやイチジクなどのドライフルーツとクコの実。「色が鮮やかで、見た目もきれい。色々なフルーツを試してみて」

エノキのキッシュはレストラン「マッシュルーム」の看板メニューだ。卵や牛乳、生クリーム、チーズなどを合わせた液に、炒めたエノキと千切りの長ねぎを加え、上にたっぷりの白煎りごまをかけて焼き上げる。「エノキはゴマと相性がいい」と山岡さん。炒め油にもごま油を使う。「シャキシャキとしたエノキの食感が引き立つ一品」で、冷凍パイシートを使えば、自宅でもチャレンジできるという。

余ったきのこの保存方法も教えてくれた。水分をよく拭きとって、風通しのいいところで少し乾燥させてからペーパータオルなどにくるみ冷蔵庫の野菜室で保存するといいという。「冷凍保存するなら、用途に合わせた大きさに切ってから冷凍しておくと、そのまま調理できて便利」だそう。

ちょっとした工夫で、旬のきのこをよりおいしく、おしゃれに楽しみたい。

(ライター 松野 玲子)

[NIKKEIプラス1 2020年10月24日付]