手指には「消毒」アルコール 「除菌用」と使い分け

NIKKEIプラス1

三浦秀行撮影
三浦秀行撮影

消毒や除菌を目的にアルコールを使うことが、日常で定着してきた。だが濃度や製品の状態によって、活用すべき場面やモノが異なるという。その使い方を教えてもらった。

アルコール製品を購入するうえで、まず知っておきたいのが「『消毒用』と『除菌用』では異なること」。ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんはそう話す。消毒とは菌やウイルスを無害化すること。除菌は文字通り菌を減らすこと。目的によってアルコール濃度が異なるので、確認して選ぶ必要がある。

用途によって 変化する濃度

ここでいうアルコールとはエタノールが主成分のものだ。衛生関連製品のメーカー、サラヤ・コンシューマー事業本部の金谷佳枝さんによると「消毒に最も適しているのは、エタノール濃度が76.9~81.4vol%(製品100ミリリットルの中にエタノールが76.9~81.4ミリリットル含まれている)で、パッケージに『医薬品』『医薬部外品』と書かれているもの」。

消毒用アルコールは、帰宅時や料理を作る前、食事の前やトイレの後などの手指消毒に使いたい。

だが適当な使い方では十分な効果は得られない。消毒効果を得るには1回の使用量が3~4ミリリットル必要。製品によって異なるが、通常、ポンプを下まで完全に押し切ったときに出る量だ。「目安として、手指全体にくまなくぬり広げて、乾くまでに15秒間かかれば適切な分量」と金谷さん。親指や指先、指の間に意識的にぬり広げるようにしよう。

アルコールには油を溶かす性質があり、除菌を兼ねて掃除に使うのもいい。除菌や掃除用には、消毒用ほど濃度が高くないスプレータイプのエタノール製剤が市販されている。通常エタノール濃度が50%ほどで、用途によって濃度が変えられているので、パッケージを確認しよう。

「揮発性が高く、乾いた後には何も残らない。洗剤などで除菌するのに比べ、拭き取る手間がいらないので、水を使えない場所におすすめ」と本橋さん。消毒用エタノールを水で薄め、アルコール対応のスプレーボトルに入れて使ってもいい。

素材に合わせ 掃除も一工夫

アルコールでの除菌、掃除の仕方は、対象物によって異なる。ダイニングテーブルやドアの取っ手などは、除菌用のアルコールを直接吹きかけて、水拭きする。水が故障の原因になる家電の手入れやコンセントまわりには、アルコールを直接吹きつけるのではなく、一旦、乾いた布やティッシュに吹きつけてから拭くといい。「皮脂がつきやすいスマートフォンの表面や、テレビのリモコンなども同じ要領で」(本橋さん)。スマートフォンや家電は電源を切ってから除菌すると安全だ。

カビが生えやすい押し入れやクローゼットは、乾いた雑巾にアルコールを吹きつけて拭く。結露でカビが生えやすいカーテン、雑菌が繁殖しやすいスリッパ、クッションなどの布製品には、しっとりするくらい噴霧し、そのまま乾かす。

広範囲の除菌や掃除に使えて便利なアルコールだが、使えないモノがあることには注意したい。本橋さんによると「油を溶かす性質があるので、油性のものやコーティングしてあるものには使用できない」。例えば食卓。一般的に家庭で使用されている硬質ウレタン塗装やメラミン化粧板のダイニングテーブルは、アルコールで除菌できる。「ガラス製やスチールも大丈夫」(本橋さん)。だがオイル仕上げやラッカー塗装してあるものは、アルコール除菌には不向きだ。

フローリングなどの床材、家具も同様だ。ワックスをかけた床やニスで塗装した家具にアルコールを使うと、ニスやワックスがはがれることがある。また「白木や桐(きり)の家具はシミになる場合があるので、使わない方がよい」(サラヤの金谷さん)。革製品も変色や変質の可能性があるため、アルコールの使用は避けよう。

アルコール除菌できるとされているものでも、濃度が高すぎると表面のツヤが失われたり、素材が変質したりすることも。パソコンのキーボードなども、アルコールの濃度によっては文字の塗料が消えてしまうことがある。心配なときは必ず、目立たない場所でテストしよう。

今や、アルコールは日常生活の必需品。正しく選び、安全かつ効果的に使いたい。

(ライター 土井 ゆう子)

[NIKKEIプラス1 2020年10月17日付]

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