ブランド力向上、長期戦略に課題

――アサヒビールはビール類のシェアで長くトップを走ってきましたが、今年1~6月はキリンビールに逆転されたと言われています。

「シェアを発表していないのでコメントできません。実は2014年に私がビール会社(事業会社アサヒビール)の社長だったときから、発表をやめましょうと業界内で提案してきました。シェアではなく価値を争う競争をしませんかと。この1~2年でシェアの発表をやめるという話しを持ち出したのではないことはお伝えしたいです」

――10年ほど前、キリンホールディングスが海外買収に投資を集中して国内事業が弱った時期がありました。現在はアサヒの国内事業が弱っているのではないかとの懸念はありませんか。

「安心はしておりません。もしかしたらスーパードライに対するお客様の評価が少し下がっているのかもしれません。ウイスキーやハイボールにニーズが移っているかもしれません。20~30代の若い層など新規ユーザーを獲得し、新市場を創出しないといけません」

――小路さんが事業会社の社長だったころからスーパードライの派生商品を多く出してきました。ブランド力が拡散するのではないかなど、賛否両論がありました。どう総括していますか。

「自分でやったことなのでいいにくいですが、やって良かったと思います。エクステンション(派生商品)で話題を喚起したり、新たなユーザーを取り込んだり短期的な効果はありました。しかし長期のブランド戦略に持って行くことが私もできなかったし、今もできていない。そこが大きな課題だと思っています」

「スーパードライブランドで、価値を高めていく挑戦ができていないのではないか、ブランドを守るサイクルに入っているのではないかとの思いがあります。『挑戦するブランド』としての具体的な施策を出していかなければなりません」

――ずっとトップを走ってきたので守りに入ってしまったかもしれませんね。組織の意識を変える必要がありそうです。

「事業会社にお願いしているのは、機能的価値と情緒的な価値を、コロナ禍を通して明確にしてほしいということです。情緒的な価値は発売当初、都会的ということでしたが、今はスーパードライのエモーショナルなものは伝わっていないのではないかと。お客様がスーパードライを飲む理由をつくらないといけないですね。当社が買収した欧州事業に、イタリアの『ペローニ』というブランドがあり、高価格帯の商品はラテンの雰囲気が好まれロンドンで爆発的に売れています。学ぶところは多いですね」

――10月の酒税改正で通常のビールの酒税が1缶7円下がりました。市場は拡大しますか。

「これですぐに拡大するとは思いません。今回を含めて26年まで3回、酒税減税があるので、ビール回帰のきっかけとして、どうマーケティング戦略を組んで盛り上げていくかが重要です」

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アルコールの次、50年見据え研究
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