5Gを事業に活かす ネットフリックスの先見力にヒント東京大学教授 森川博之

5Gでは関わる人、モノすべてを考える必要がある イラスト・よしおか じゅんいち
5Gでは関わる人、モノすべてを考える必要がある イラスト・よしおか じゅんいち

今春、5G(第5世代移動通信システム)のサービスが始まった。社会や産業のデジタル化を促し、大きな変革に資すると期待されている通信インフラだ。人のみならずモノをも対象にしているため、多種多様な産業分野でのデジタル化が促進される。

「米中5G戦争」が象徴するように、経済に安全保障が入り込んでくる時代に入った。中国政府のデジタルシルクロード政策と、5G通信機器の世界最大メーカーのファーウェイの存在が背景にある。

国家の興亡を左右

通信インフラは覇権国家と切り離すことができない。大英帝国が覇権を握った裏には世界に張り巡らせた電信ネットワークがあった。英国史家ヘッドリクが「見えざる武器」と呼んだものである。デカップリング(分断)の今後を占うためには、国家と通信インフラの関係を理解しておかなければいけない。大野哲弥著『通信の世紀』(新潮社・2018年)は、国家の興亡史においていかに通信インフラが重要な役割を果たしてきたかを叙述している。米中のはざまでの日本の立ち位置を考えるには、歴史を振り返ってみたい。

5Gを事業に活(い)かすために考えておくべきこととして2つある。

1つ目は、「5Gは進化し続ける」という認識でもって土俵にあがることだ。技術は日々進化し、10年先の5Gと今の5Gの性能とは異なる。10年先の進化した5Gを見据えて将来を深く洞察することが大切だ。

総務省の現役官僚による片桐広逸著『決定版 5G 2030年への活用戦略』(東洋経済新報社・20年)は、国の政策や取り組みをも盛り込んでおり、大局的な視点からの5Gの理解に役立つ。難解な5Gをやさしく伝える試みをしているのが、藤岡雅宣著『いちばんやさしい5Gの教本』(インプレス・20年)だ。

米ネットフリックスは07年に映像ストリーミング配信に移行した。当時のインターネットの速度は遅かったため、ストリーミング配信が今のような成功を収めるとは、ほとんどの人が予想していなかった。

ネットフリックスの成功の秘訣は、通信速度が速くなったらどのような世界になるのか、通信速度が速い世界では顧客はどのようなサービスを望むのかに関して、誰よりも先に深く洞察していたことにある。

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