洗濯方法を再点検 詰め込みすぎNG、すすぎ2回
洗濯家 中村祐一
10月に入り、秋冬物に衣替えした人も多いのではないだろうか。もう着なくなった春夏物はしまう前にきちんと汚れを落としておきたいところ。長期間収納したままになるので、いつも以上に仕上がりが気になる。そんな衣替えの時期は日ごろの洗濯のやり方を点検する絶好の機会でもある。
まず基本的な考え方として、洗濯は衣類の汚れを水に移す作業だということを改めて意識してほしい。ただ最近の洗濯機では節水が当たり前になっていて、汚れを移す先になる水の量はかなり少なくなった。とりわけドラム式(横型)の洗濯機で顕著だ。
ドラム式では主に衣類を持ち上げて落とす「たたき作用」によって汚れを取り除く。たたき作用がしっかり出せなければ汚れが落ちないのだが、洗濯槽に衣類を詰め込みすぎてはいないだろうか。隙間がない状態だと、たたき作用は出にくくなる。衣類を入れるのは洗濯槽の半分から3分の2程度を目安にしてほしい。
ちなみに縦型でも最近は節水が進んでいるので、詰め込みすぎには注意したい。衣類の汚れを水に移すのが洗濯と考えれば、衣類がしっかり沈む程度の水の量で洗うのが大事だ。
衣替えに合わせてもうひと手間かけられるなら、40度程度のお湯を使い、皮脂などの汚れをしっかり浮かせよう。それからすすぎでしっかり流しておきたい。
すすぎでは回数を1回に設定して柔軟剤を大量に使う人が少なくないようだ。これだと汚れが落ちにくくなる循環に陥りかねない。1回目のすすぎというのは本来、衣類から汚れや洗剤を水に移すタイミングになる。しかしこの段階で柔軟剤を加えてしまうと、汚れなどが出ていくのとは逆、柔軟剤の成分が入っていく流れも生じてしまうのだ。
衣類の繊維から不要なものを取り除きたいのか。それとも衣類に柔軟性や抗菌・防臭などの成分を加えたいのか。どっちつかずになってしまっている。もしこのまま洗濯を終え、長期間しまっておくとなると、どうしてもニオイや黄ばみが生じやすくなるだろう。普段の洗濯でも同じだが、柔軟剤を使うのなら、すすぎは最低2回は必要。1回だけなら、柔軟剤を使うのはおすすめしない。
衣替えの時期、しまい洗いをするのならば、すすぎの最後には柔軟剤ではなく、クエン酸など酸性のアイテムを使うとよい。洗剤のアルカリ性を中和してくれるのはもちろん、しまっておく時の黄ばみやニオイの防止にも一役買ってくれるだろう。クエン酸を使う場合は柔軟剤の投入口に小さじ1~2杯セットしておけばいい。
衣替えは何かと大変。しかしどうせなら日ごろの洗濯を見直すチャンスにもしてほしい。
1984年生まれ。クリーニング会社「芳洗舎」(長野県伊那市)3代目。一般家庭にプロの洗濯ノウハウを伝える「洗濯家」として活動。「洗濯王子」の愛称でメディア出演も。
[日本経済新聞夕刊2020年10月6日付]
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