焦げた味噌だれが香ばしい 群馬の焼きまんじゅう

「原嶋屋総本家」はかゆとこうじを寝かせた種を使う
「原嶋屋総本家」はかゆとこうじを寝かせた種を使う

「焼きまんじゅう」は小麦の栽培が盛んな群馬県ならではの郷土料理だ。冷めると硬くなるので、焼きたてを食べるのがミソ。焦げた味噌だれが香ばしく、素朴な味わいは群馬出身者以外にも懐かしさを感じさせる。

群馬県外の人なら、その名前から「餡(あん)入りの餅を焼いたもの」と思うだろう。初めて食べたときは想像との違いに面食らった。まんじゅうはふわふわと軟らかいパンのようで、餡がない。味は甘辛い。味噌だれを塗っているためだ。

群馬県人からは「ソウルフード」として愛される。発酵させた小麦粉を蒸した「素まんじゅう」3~4個を竹串に刺し、焼いて味噌だれを塗るのが一般的。1串100円台で売る店もあり、手ごろなおやつだ。祭りの屋台などには欠かせない存在で、集会などでもよく出てくる。県が11年前に作成したガイドブックでは県内83店を紹介している。

代表的な店が前橋市の「原嶋屋総本家」。創業は江戸末期の1857年(安政4年)だ。素まんじゅうを作るのにイースト菌を使う場合が増えているが、この店は昔ながらの方法で、かゆとこうじを寝かせた種を使う。気温や湿度に出来具合が左右されるが、5代目の原嶋雄蔵社長は代々のこだわりを貫く。

「忠治茶屋本舗」は特製味噌でたれを作っている

焼きまんじゅうは「まんじゅう半分、たれ半分」とも言われ、たれにも店ごとの特徴がある。県のガイドブックによると「味噌と砂糖のさらり系」「ねっとり煮込んだ蜜系」など5系統がある。「忠治茶屋本舗」(伊勢崎市)のたれは甘めで「蜜系」の印象だ。特製味噌を発注して使っている。この店は餡入りもある。桜場裕太社長によると、「酒まんじゅう」を串に刺して焼いたのが始まりだ。

変わり種は「助平屋饅頭(まんじゅう)総本舗」(太田市)。マヨネーズや抹茶、きな粉、ごまをかけて提供する。1番人気のマヨネーズ味を食べると、酸味が意外にも合った。お好み焼きやたこ焼きに付けて食べるのに通じるものがあると感じた。

「上州焼き饅祭」では巨大な焼きまんじゅうをふるまう=いせさき焼きまんじゅう愛好会提供

焼きまんじゅうにちなんだ群馬ならではの祭りが1月に伊勢崎市内の神社で開く「上州焼き饅祭(まんさい)」だ。直径約55センチメートルの特大品を参拝者にふるまう。主催するいせさき焼きまんじゅう愛好会事務局の金井珠代さんによると、焼きまんじゅうは焼き加減や軟らかさ、たれの味などが地域によって異なり、「どれが一番おいしいかではなく、生まれ育った地域の味が一番」なのだという。

<マメ知識>小麦生産多く郷土料理に
群馬県は昔から小麦の生産が盛んだ。2018年の収穫量は全国4位。水はけが良い土壌などを生かし、米の裏作で栽培する農家が多い。お好み焼きなどに代表される関西の「粉もん」ほど有名ではないものの、焼きまんじゅうのように小麦を使った独自の食文化を育んでいる。郷土料理「おっきりこみ」は幅広の麺と野菜を煮込む。県が6年前に作成したガイドには、この料理を出す約100店を掲載している。桐生市などでは幅広の麺が特徴の「ひもかわうどん」が根付いている。

(前橋支局長 古田博士)

[日本経済新聞夕刊2020年10月1日付]

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