NIKKEIプラス1

歴史を知るには、その土地に長く住む人らの話に耳を傾けよう。慶応大学名誉教授でNPO法人鶴見川流域ネットワーキング代表理事の岸由二さんに鶴見川を案内してもらった。

筆者(左)に鶴見川の説明をする慶応大の岸名誉教授(横浜市)=三浦秀行撮影

地図を見ると、鶴見川は直角に曲がるほど蛇行する箇所が多くある。過去たびたび氾濫し、高度経済成長期以降、治水対策として川底の深掘りや川幅の拡張などが施されて改良された。

岸さんが注意を促すのは小さな水路で、江戸時代に整備された二ケ領用水だ。海水が混ざりやすい鶴見川の水は田畑に適さず、多摩川の水を引くために作られた。地中化されたが、地上に残った部分も多い。岸さんは「台風などで氾濫した事例を見ると、大きな河川との合流点など排水管理が難しいことがわかる。治水の大きな課題」と訴える。

土地活用や治水の変遷を知れば住まい探しの視点や防災への意識も変わる。命と財産を守るには土地の過去に向き合うことが大切と感じた。

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災害の記録 伝える地図記号

2019年から使われ始めた自然災害伝承碑の地図記号=国土地理院提供

2019年度には新たな地図記号「自然災害伝承碑」が設けられた。18年7月に発生した西日本豪雨の際、被災地には伝承碑があったものの、地元住民に知られていなかったのを踏まえて創設された。

WEB上の地理院地図にある碑の記号にカーソルを合わせると災害の記録がわかるよう整備が進んでおり、現在は全国593基の情報にアクセスできる。地理院地図には、豪雨や台風などの浸水状況を説明する機能もあり、あわせて使えば碑の分布と被災地の重なりも見えてくる。

紙地図は売り上げ減少が続き、「紙の地図を扱う専門店も閉店や廃業している」(地図研究家の今尾恵介さん)。地図でもWEBの有効活用が大切になっている。

(田中早紀)

[NIKKEIプラス1 2020年9月26日付]