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最新のアイテムを並べて「タブー」を打破する

7月末に東京・六本木にオープンした「New Stand Tokyo(ニュー・スタンド・トーキョー)」。「未来の日用品店」をコンセプトに掲げる、米ニューヨーク発祥のセレクトショップの米国外1号店だ。流れている音楽の歌詞を映し出すスピーカーや、テレビ会議用に上半分だけフォーマルな素材にした部屋着など、オリジナリティーあふれるアイテムを取り扱う。

店内の一角、生理用品のコーナーを担当するのが、カマーゴ李亜さんだ。生理や妊娠などの悩みをテクノロジーで解決する「フェムテック」に精通し、最新の商品を紹介する。

取り扱うアイテムは、まだ日本で普及していないものばかりだ。設立数年の国内外の若いスタートアップ企業とカマーゴさんが直接やり取りして仕入れている。例えば、スマホアプリで精子の状態を確認できるという妊活アイテムの「Seem」。男性も自宅で妊活の第一歩を踏み出せる商品として同店でも話題になっている。

「デリケートな話だけに、お客さんの反応をしっかり見る」。来店後3~4分はあえて声がけをせず、商品説明を読み終えたタイミングで声をかける。その際、自分の体験談を話すよう心がけている。「見ず知らずの店員にいきなり悩みを打ち明けるのは勇気がいる。でも、こちらが自分をさらけ出せばお客さんも話してくれる」

フェムテックという言葉が使われる機会は増えたが、まだまだ日本ではタブー視する風潮は根強い。「オープンに話しにくい話題でも、このお店なら話しやすい」。カマーゴさんが来店客から言われた言葉だ。偶然立ち寄った若い夫婦が妊活の話で盛り上がったり、親子の来店客が初潮について話し合うきっかけになったりする場面を目の当たりにした。

電子レンジで消毒できる月経カップや、尿漏れ防止のため骨盤底筋を鍛えるアイテムも取りそろえる。カマーゴさんは「こちらがオープンに話しすぎると、さすがに引くお客さんもいる。不快感を与えないよう見極めが重要」と話す。客との距離感は試行錯誤の連続だ。

商品説明用のPOPには、商品を通じて解決したい課題とともに、創業者の名前と顔写真が載っている。「世の中にこういう問題と正面から向き合う人がいるとお客さんに実感してもらいたい」との狙いだ。

カマーゴさんは商品開発者と来店客の双方と密にコミュニケーションをとっている。開発者の思いを客に伝え、客のリアルな悩みをフィードバックする。よりよい商品を生み出すための潤滑油役という重要な存在だ。

店内は白を基調とした開放的な雰囲気だ。「いままでオープンに扱いにくかった類いの商品を、こんなに堂々と並べている」と笑う。カマーゴさんの目標は「タブーをワクワクに変えること」。簡単ではない達成目標だからこそ、やりがいを感じている。

(川井洋平)

[日経MJ2020年9月21日付]

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