飲酒や運動不足…コロナ・ストレスで高まる痛風リスク

写真はイメージ=PIXTA
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新型コロナウイルスの感染拡大で痛風につながる高尿酸血症のリスクが高まっている。在宅勤務や外出自粛で運動不足になったり、食生活が乱れたりしやすいためだ。痛風の患者は年々増加しているが、予防・治療法には「誤解」も多い。正確な知識で発症を抑え、不安を解消したい。

「痛風の発症はこれまで、季節の変わり目の春やアルコール摂取が増える夏が多かった。コロナ禍で秋以降も注意が必要になりそうだ」。日本痛風・尿酸核酸学会の久留一郎副理事長(鳥取大学医学部教授)は警鐘を鳴らす。

食生活の乱れと運動不足は、高尿酸血症の患者にとって最も注意すべき点だ。在宅勤務でストレスもたまり、飲酒量が増えやすくなっている。日本酒1合、ビールなら350~500ミリリットルといった1日の目安をできるだけ守りたい。

患者のなかには「プリン体ゼロとされる焼酎などの蒸留酒を飲んでいるから大丈夫」と考える人も多い。久留氏は「それは誤解。アルコールを大量に飲めば痛風の危険性を高めることに変わりはない」と指摘する。

アルコール自体が血中の尿酸を増やしやすいのがその理由だ。実は体内にある尿酸のうち、飲食物からのプリン体摂取によるのは2割程度。8割は体内で合成され、一定量たまったら尿や汗、便と一緒に排せつされる。大量のアルコールは合成や排せつのバランスを崩すおそれがある。

プリン体は肉類や内臓、魚介類に多く含まれるが、気にしすぎると食の楽しみが薄れる。管理栄養士の尾上雅子氏は「食べ過ぎを防ぎ、主食と主菜、副菜のそろった栄養バランスの良い食事を心がけるべき。そうすれば自然と食物由来のプリン体摂取量は適正になる」とアドバイスする。

食べ過ぎ防止のコツは「野菜や海藻・キノコ類を積極的に取り入れ、ボリュームを増やせば満足度が上がる」(尾上氏)。水やお茶など水分を十分にとれば尿量が増え、尿酸の排せつを促すことができる。

肥満気味の人は減量も欠かせない。久留氏によると、減量などで内臓脂肪が15%以上減少すると尿酸値が下がる。ただ、筋肉トレーニングなどの無酸素運動は体を動かす際に使われるATP(アデノシン3リン酸)を分解させ、体内の尿酸を増やす。尿酸値を下げるための減量にはジョギングやサイクリングなどが勧められる。

医師から処方された尿酸降下薬は継続して飲む必要がある。高尿酸血症は痛風発作(関節炎)が起きない限り自覚症状がなく、途中で薬をやめる人が多い。久留氏によると、その割合は約75%と高血圧や糖尿病の患者(40%程度)に比べて大幅に高い。コロナ禍で外出がしにくくなったほか、感染を恐れて通院を控える動きも出ている。

痛風の発作が起きると足の一部などが腫れ、耐えがたいほどの痛みに襲われる

しかし、服薬を中止すると「2週間で尿酸値が元の値に戻る」(日本痛風・尿酸核酸学会)。3年以内に発作が再発する確率も高まる。高尿酸血症を放置すると、腎臓や心臓血管に悪影響を及ぼし、尿路結石や腎臓病につながる懸念もある。病院などでの受診が難しい場合、電話診療や遠隔診療を活用したい。

服薬は生涯続ける必要があるとされるが、尿酸値が安定している場合は医師と相談し、いったん中止するケースもある。自分の判断だけでやめるのは避けるべきだ。

新型コロナの治療薬候補のなかには尿酸値を上げたり、尿酸降下薬との併用で悪影響が出たりする薬があるとの報告もある。日本痛風・尿酸核酸学会は「コロナに感染した場合、痛風・高尿酸血症で治療中であることを医療従事者に伝えることが重要だ」と呼びかけている。

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予備軍患者数 1000万人超も

明治時代以前の日本にはなかったとされる痛風だが、近年は食生活の欧米化などで増加傾向が続く。厚生労働省の調査によると、2016年の患者数は推計110万人と30年間で4倍に増えた。中高年の病気とのイメージもあるが、40代以下の発症も多い。

日本生活習慣病予防協会などによると、「痛風予備軍」とされる高尿酸血症の患者数は1千万人を超え、30~40代男性の3割が該当するとの推計もある。

コロナ禍による痛風患者の増加や症状悪化を懸念し、日本痛風・尿酸核酸学会は「特に高尿酸血症・痛風患者の皆様に知っておいていただきたいこと」との告知をホームページに掲載。コロナ禍でも適正な生活習慣の維持と服薬の継続を呼びかけている。公益社団法人、日本栄養士会もホームページで栄養指導に関する生活者への助言をQ&A形式で公開している。

(西村正巳)

[日本経済新聞夕刊2020年9月9日付]

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