漬物達人のこだわりに応え塩50種類 京都・紀ノ国屋
高級スーパーの紀ノ国屋(東京・新宿)は5月、ジェイアール京都伊勢丹(京都市)内に関西1号店を開いた。2023年をめどに関西で10店舗程度を出店する予定で、同店を西日本のブランド発信の拠点と位置づける。「第2の創業」(紀ノ国屋の高橋一実副社長)と力を入れる関西への挑戦は成功するか。
JR京都駅に直結する伊勢丹の地下2階の食料品フロアに出店した。売り場面積は約140平方メートルと小型だが、全4000商品のうち地場の小売店と違いを出しやすいプライベートブランド(PB)商品は約600品目と充実させた。自炊する時間が取りにくい通勤者の需要も高いとみて、冷凍食品の売り場は同規模店舗の3倍の面積を取った。
地域のニーズを吸い上げるため、客の要望も積極的に聞いている。「お客様のリクエストは期待の表れ。そろえられないとは言えない」(高橋副社長)
例えば京都は漬物を自宅で作る人が多く、塩の需要が高い。「あの塩でないと漬物が作れない」。そんな消費者のこだわりに応えた結果、塩の品数は約50種類まで増えた。要望が多かっただし汁用の昆布など乾物の品ぞろえも全店で最多にしたほか、調味料の品ぞろえも充実させた。開店3カ月で要望に応えた商品は200を超えるという。
限定商品も展開する。6月に発売した「京仕立ての台湾風カステラケーキ」(864円)は京都産の高級卵を使用し、地元の菓子店と共同開発。発売1週間で1500個を販売した。今後も地元の菓子店や食品店などと協業し、新商品を企画する。
関東の店舗と同様に、総菜は東京都三鷹市のセントラルキッチンから毎朝トラックで配送する。今は「採算度外視」(同)だが、近いうちに京都で製造したPBやバイヤーが関西で発掘した加工食品を戻りのトラックに載せて配送効率を高めていく方針だ。関西で店舗が増えれば、総菜の現地生産も検討する。
高橋副社長は京都を「(旗艦店のある)東京・青山に次ぐ、第2の創業地にしたい」と力を込める。認知度の向上が課題だが、切り札になりそうなのがエコバッグだ。
同社のエコバッグはこれまでも人気だったが、7月からのレジ袋有料化で注目が高まっている。7月から折り畳み式のエコバッグ(1100円)を京都駅限定で先行販売したところ発売1週間で400個を売るヒットとなった。近く「Kyoto」の刺しゅう入りの限定トートバッグも販売予定だ。
同社のロゴマーク付きのバッグを使う人が増えれば認知も高まるほか「男性や大学生が日常使いするようになれば、客層も広がる」(同)と期待する。
高級スーパーでは成城石井(横浜市)や明治屋(東京・中央)が関西出店で先行するほか、兵庫地盤で約30店を展開するいかりスーパー(兵庫県尼崎市)など地場の競合店もある。「東京の有名店」の目新しさに頼らず、細やかな地元ニーズに応えて真のファンを作れるか。京都店は今後の関西戦略の行方を占う試金石となりそうだ。
(平嶋健人)
[日経MJ 2020年9月2日付]
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