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ゲーム理論の考え方を紹介する本や、国際関係からゲーム理論を学ぶ本が相次ぎ刊行されている

国際協調か分断か。新型コロナウイルスは国際社会に緊張をもたらしている。

岡田章著『国際関係から学ぶゲーム理論』(2020年4月、有斐閣)は、国際紛争や国際協力を題材にしたゲーム理論の入門書だ。同書によると、ゲーム理論とは、社会で活動する人間、組織、国家といった複数のプレーヤーが相互に依存する行動や意思決定を研究し、社会の成り立ちや、あり様を探究する学問。ゲーム理論の視点と分析手法は国際社会の諸問題の解決のために有効と説く。

国際協力を阻む要因は何か。「相手が協力するなら自分も協力するが、相手が協力しないなら自分も協力しない」と考える「協調問題」、「自分だけ協力せずに相手に協力させて大きな利得を得ようとする」ために協力が実現しない「ただ乗り問題」に加え、協力による結果を評価する方法が国によって異なり、公平性を巡って意見が対立しがちな点を挙げる。同書では、軍縮、領土、地球環境問題、自由貿易を巡る国家間の交渉の難しさをゲーム理論を使って解き明かし、国際協力を実現するには人間の行動誘因(インセンティブ)と社会の仕組み(制度)をどのように変えればよいのかを探る。

「人の行動の裏側には、何か理由がある」「自分の考え方を客観的に見てみると、分かることがあるかもしれない」……。鎌田雄一郎著『16歳からのはじめてのゲーム理論』(ダイヤモンド社、20年7月)は、町中の家を巡回し、人間たちの行動をのぞき見するネズミの親子が主人公で、ゲーム理論の考え方を物語の形式で伝えている。同書では家族という「小さな社会」を舞台にして物語を展開するが、国の政策や税金が関わる「大きな社会」でも、必要とされる思考法は同じだと説明する。

鎌田氏は、ゲーム理論を「大きな社会」の文脈で考える書として松井彰彦著『高校生からのゲーム理論』(ちくまプリマー新書、10年4月)を薦める。財政危機から環境問題、戦争、企業間の競争まで、取り扱うテーマは幅広い。「真実はみんなの意見でつくるもの」の一節では、ドナルド・トランプ氏を、あまり地価が高くない土地や家屋を区域単位で安く買い取り、少し手を入れて「結構いけてる地域」にして大もうけをした不動産王として紹介している。国際社会をかく乱しているように見えるトランプ米大統領の行動の裏側には何があり、どんな「真実」をつくってきたのだろうか。

(編集委員 前田裕之)

[日本経済新聞2020年8月29日付]

国際関係から学ぶゲーム理論 -- 国際協力を実現するために

著者 : 岡田 章
出版 : 有斐閣
価格 : 2,530円 (税込み)

16歳からのはじめてのゲーム理論 "世の中の意思決定"を解き明かす6.5個の物語

著者 : 鎌田 雄一郎
出版 : ダイヤモンド社
価格 : 1,760円 (税込み)

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