要介護リスク、15の質問で発見 「フレイル健診」開始

対象者を自宅訪問する際は、管理栄養士らが摂取すべき栄養素や食品について助言する場合もある。フレイル予防には食生活も重要とされる。厚生労働省は、体格指数(BMI)が18.5未満で、過去6カ月間で2~3キログラム以上の体重減少があれば栄養不足に陥る可能性があるとして、支援の対象に例示している。

フレイル対策が進む自治体では効果も出ている。

神奈川県大和市は栄養不足やそのリスクのある75歳以上の高齢者をアンケートなどで把握し、戸別訪問で食生活を指導する取り組みを16年度から実施している。要介護状態や死亡する人の割合を調べたところ、戸別訪問を受けた人は受けなかった人に比べて18年度は4分の1程度の水準だったという。同市は介護給付費の抑制効果が18年度だけで約7千万円に上ると試算した。

受診率は3割

全国的には後期高齢者向けの健康診査の受診率は現在、3割程度にとどまり、向上策が不可欠だ。厚生労働省は地域の高齢者が集まって交流する「通いの場」などでも質問票を活用し、フレイル対策に役立てたい考えだ。

今年は新型コロナウイルスの影響で、健診を一時休止する自治体も相次いだ。フレイルの質問票を活用した保健指導も当初の想定より遅れている。ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員は「新型コロナの影響で外出機会が減り、家に引きこもりがちな高齢者が増えている」と指摘。「精神面や社会的孤独に焦点を当てた対策がより重要になる」と話している。

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健康寿命延ばし医療費抑制

国がフレイル対策を進める背景には高齢者が増える中、介護を必要とせずに生活できる「健康寿命」を延ばし、膨らみ続ける社会保障費を抑える狙いがある。

2017年度の国民医療費は約43兆円。国の推計によると、40年度には最大約78兆円に膨らむ見通しだ。要介護認定者は3月時点で669万人で、この10年で4割ほど増えた。40年度の介護給付費は約26兆円と18年度の2.4倍に膨らむと見積もられている。健康寿命は最新の16年で男性が72.14歳、女性が74.79歳。国は40年までにそれぞれ3年以上延ばす目標を掲げている。

自治体の保健師の確保が課題だ。同省によると、保健師の就業者は18年12月時点で約5万3千人。保健師の国家試験合格者は直近10年間で10万人を超える。保健師として働いていない人材が多いとみられる。

小規模な市町村ほど確保が難しい面もある。国は20年度、保健師らの採用を促すため人件費を補助する制度を創設した。

(上林由宇太、川野耀佑)

[日本経済新聞朝刊2020年8月31日付]

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