段ボールは害虫に注意 処分は早く、天日干しもOK
インターネット通販で届く荷物に段ボール箱はつきものだ。そのまま放置すると、害虫のすみかになってしまう場合があるという。住生活ジャーナリストの藤原千秋さんが注意すべき点を解説する。
コロナ禍がもたらした「新しい生活様式」には、通販利用の推進も含まれている。筆者の家庭でも買い物の頻度を下げたり、長時間の外出を避けたりするためにネット通販が欠かせない。だが、あっという間に大量の段ボールがたまってしまうのが悩みのタネだ。戸建てに住むなどいつでもゴミを出せるわけではない家庭では、置き場に困る例も多いだろう。
湿度高い環境で 爆発的増殖招く
問題は置き場だけではない。段ボールをねぐらにして増える害虫がいるのをご存じだろうか。代表的なものは、チャタテムシとゴキブリだ。箱状のままでも、潰して重なり合った状態でも、その隙間に潜む。
配達前に段ボールが置かれている倉庫などから一緒にやってきたり、卵が産み付けられたりしている。長期間保管していると産卵、ふ化までして爆発的に増えることがありうる。
チャタテムシは、一般的になじみが薄いかもしれない。だが、ごく普通の家庭でもよく発生する虫だ。体長が成虫でも1ミリ程度と小さい。見えたとしてもダニと間違えられやすい。
家のなかでは家具や本、乾物などのそばで見られる。こうしたものを食べるというより、そこに生えたカビの胞子を好む。まき散らされた白い粉のように見えて、近づくとうごめいている。
段ボールも風通しが悪く、湿気のこもった部屋で保管していると、カビが生える。その結果、チャタテムシの大発生を引き起こしてしまうことがある。コロナ禍の今はあまり考えられないかもしれないが、長期間旅行して家を留守にしたときなどは特に注意が必要だ。
一方のゴキブリは玄関などから侵入し、台所や浴室など温かく、湿った場所に潜む。アース製薬の生物研究課課長、有吉立さんによると、段ボールのように厚紙が層をなしている場所はもともとゴキブリのすみかになりやすい。「湿り気を帯びると、ゴキブリにとってはより好環境になる」という。
では、どのように保管すれば、チャタテムシとゴキブリの発生や増殖を防げるのだろうか。大原則としては、段ボール箱を長期間ため込まないようにすることが重要だ。段ボールを再利用し、収納などに使うのも避けたい。
使用済みの段ボールはなるべく速やかに古紙収集日に家から出すようにしよう。雨風にさらされるベランダやガレージなどに保管することもあまりおすすめできない。
天日干しも一手 発生後は毒餌剤
とはいえ、決まった収集日に持っていけないときもあるだろう。収集までの間隔が空いたり、家に余剰スペースがなかったりする家もあるかもしれない。どうしてもベランダなど屋外に保管しなければならなくなった場合は、どうしたらいいか。
一つの解決策として、ゴキブリについては屋外用の毒餌(どくじ)剤を設置することをおすすめしたい。虫の誘引成分などをプラスチック容器に入れたもので、専用品がドラッグストアなどで買える。成虫をおびき寄せることができたら、その後の繁殖を防げる。ゴキブリが寄りつきたくなる成分で誘い、粘着シートでとらえる捕獲器を併用してもいい。
チャタテムシに対しては、ひとまず保管中の段ボールを湿った状態にしないことを意識しよう。ゴキブリ対策も同じことがいえるが、晴れた日には段ボールをあえてひもでくくって束にせず、外で干すのも一手だ。
いったん発生してしまった虫にはどう対処すればいいか。ゴキブリは部屋を閉め切り、殺虫成分を含む煙や霧を出すくん煙剤のほか、毒餌剤、ホウ酸団子などを使って閉め出したい。ホウ酸団子は口に入れると危険なので、小さな子どもやペットがいる場合は控えた方がいい。
チャタテムシは「湿気が下がると一気に死に絶える、弱い生き物」(有吉さん)。夏の間は湿度が50%以下になるようエアコンをかけ続けるといい。段ボールがもともと湿っていた場合は完全に虫を排除できないが、空気の乾燥する季節になれば自然にいなくなることも覚えておきたい。
(住生活ジャーナリスト 藤原 千秋)
[NIKKEIプラス1 2020年8月29日付]
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