韓国「コロナ」でプチ贅沢 牛ステーキ100グラム900円
焼き肉文化が根付く韓国で国産牛の価格が上がっている。6月に最高ランクの1等級ステーキ肉が初めて100グラム1万ウォン(約900円)を突破した。長期的な物価上昇に加え、新型コロナウイルスに伴う政府の支援金を受け取った消費者が「プチ贅沢(ぜいたく)」として高級肉に手を伸ばしたのが要因だ。
政府機関の畜産物品質評価院が集計する「1等級ステーキ肉」の店頭価格は年明け以降、9000ウォン前後で推移してきた。それが支援金が支給され始めた5月中旬に急上昇し、6月3日に史上初めて1万ウォンの大台に乗せた。牛肉のほか豚三枚肉(サムギョプサル)も人気で、年明け以降に牛肉は10%超、豚肉は40%程度上昇した。
韓国政府の「緊急災難支援金」は世帯人数に応じて全国民に一律支給された。金額は4人以上の家族で100万ウォン(約9万円)、単身世帯で40万ウォンだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「すべての国民が苦痛と努力に対して補償を受ける資格がある」として、当初の所得制限を撤廃し、支給対象を全国民に広げた。
支援金は、感染症の影響で収入減少に苦しむ個人を救うだけでなく、外出自粛に伴い販売低迷に悩む流通・サービス業にも恩恵をもたらした。
カード社会の韓国らしくクレジットカード会社のポイントの仕組みを活用し、8月末までという有効期限付きで給付した。カードを持たない人も地域の住民センターで手続きすれば期限付きのプリペイドカードを受け取れる。貯金に回せないため、多くの人が普段とは違う消費を楽しんだ。
ソウル市城東区に住む主婦(48)は「普段、国産牛は高くて頻繁には食べられない。支援金が出たから20万ウォン(約1万8000円)分のステーキ肉を買って家族で楽しんだ」と話す。
多くの消費者が支援金を使い切った今、高級肉は下落傾向にある。牛ステーキ肉は7月1日に100グラム1万251ウォンの最高値を付けた後、足元では1万ウォンを下回る。バカンスシーズンを迎える7~8月は、6月と比べて高級肉は値上がりする傾向があるが、支援金というカンフル剤が切れた今年は状況が異なるようだ。
(ソウル=細川幸太郎)
[日経MJ 2020年8月24日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。