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結婚や出会いの慣習が変わり、その影響は日本社会全体に及んでいる イラスト・よしおか じゅんいち

結婚や出会いの慣習が変わり、その影響は日本社会全体に及んでいる イラスト・よしおか じゅんいち

過去30年、欧米では婚外子の増加、離婚や再婚の増加という形で家族の流動化が進んだ。家族の流動化に対応し、特に欧州では子どもを持つ家族への支援策を拡充した。日本では、今も家計の担い手は夫で、家事育児の担い手は妻という分業型のカップルが夫婦の多数を占め、社会保険もこれを前提にしている。だから一見日本の家族は変わっていないように見える。

ただし2010年以後、夫婦世帯では明らかな変化が出始めた。大卒層を中心に、夫婦とも正社員であっても子どもを持つ新しい家族が拡大している。ワークライフバランス政策が高学歴層を中心に成果をあげたからだろう。しかし奥田祥子氏の『夫婦幻想』(ちくま新書・19年)は、新しいタイプの夫婦の思いがけない課題を描く。育児を手伝ったため社内で出世できず、妻の出世を受け入られない夫の気持ち、子どもを持たないことを選んだかに見える夫婦の複雑な気持ちなど、長期にわたるインタビューから明らかにする。

乏しい子育て支援

一方で、妻がいったん専業主婦となって子を持つ世帯も依然として半数強を占める。しかしその層は以前と異なる。周燕飛氏の『貧困専業主婦』(新潮社・19年)は子どもをもって幸せと言いつつ、夫の低い給料でやりくりに苦労する様子が描かれている。出産後の就業継続環境が改善された今、妻が無職となる層は、夫の雇用条件も相対的に脆弱な層が増えているためだろう。しかしこうした脆弱な子育て層に対して、注目も薄く、政策も不十分だ。

結婚とは反対に、離婚はどうなのか。橘木俊詔・迫田さやか氏による『離婚の経済学』(講談社現代新書・20年)は、米国で離婚が増えていった理由は女性の経済的自立であるとする。一方で日本の離婚は、女性の賃金が低いことから、いまだにそうした状況にはない。日本のひとり親世帯の相対貧困率は経済協力開発機構(OECD)の中でもっとも高く、20年前から変わらない。それは生計を立てがたいパート賃金相場が成立しており、シングルマザーの多くがこうした仕事に就き、苦境を強いられている現状を映し出す。

未婚のまま中高年化する若者が増えているが、結婚の前提となる出会いは日本社会ではどう変化したのか。比較家族史学会監修『出会いと結婚』(日本経済評論社・17年)では、見合いが減少し、職縁は横ばいにとどまると指摘する。つまり見合いにかわる出会いが形成されていないのだ。また性別役割分業的な結婚を期待できない層では、恋愛そのものへの関心が下がり、ペット、キャバクラ、アイドルなどで親密性の感情を満たす現象が指摘される。

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