スチームクリーナーで水回り掃除 お助け家電で充実感生活コラムニスト ももせいづみ

2020/8/18
写真はイメージ=PIXTA
写真はイメージ=PIXTA

夏休みになって時間ができたので、久しぶりにスチームクリーナーを出して水回りの掃除をしてみた。高温の蒸気が勢いよく出ることで、「洗剤を使わず油汚れなどが落ちて衛生的」と人気の家電だが、私にとっては「家事をちゃんとやった」という気持ちを生んでくれる道具のひとつだ。

まず洗濯機の蓋の継ぎ目や洗剤投入口のまわりに蒸気をシューッ。溝にたまった汚れが一気に押し出されるので、あとは乾いた布で拭き取ればさっぱりきれいになる。従来なら歯ブラシや綿棒、竹串などを使って奮闘するはずの作業がスイッチひとつで済んでしまうのは本当に楽で気持ちがいい。

ガス台とカウンターの間にたまった油汚れ、サッシの溝、シャワートイレのつなぎ目などにも利用している。目に触れるたびに汚れが気になるものの、なかなか手を出せずにいた場所が一気にきれいになると、「ちゃんとできた私」という自尊心のようなものが生まれてきて、ちょっと気分がいい。

スチームクリーナーは「時短」の道具とも言えるが、私にとっては、ふだんやらない手間のかかる作業を「このくらい簡単ならやってもいいかな」と思わせてくれる、「手間短」と言いたい道具のひとつだ。

同じような道具に、ホームベーカリーがある。パンづくりは発酵に時間がかかるため、以前は自家製の焼きたてのパンを食べるなんて、忙しい人には夢のまた夢の話だった。ホームベーカリーなら、寝る前にタイマー予約しておけば、パンの焼ける匂いで目を覚ますことだってできる。「自分でパンを焼いた」「パンの焼ける匂いが家中にただよった」ことがもたらしてくれる充実感は格別のものだと思う。

コロナ禍での外出自粛中、薄力粉や強力粉が軒並み売り切れになったのはパンやお菓子をつくる人が増えたからだという。私の周囲ではぬか漬けをはじめた、梅酒を漬けたという人も多かった。

家事の合理化は大切だけれど、人は心のどこかで「手間をかける」作業も必要としているように思う。そこに「ちゃんとできた私」という肯定感が生まれることがあるからだ。ただ普段はその手間の時間がなかなか持てないことが多いもの。道具が手間のハードルを下げてくれるなら、どんどん取り入れていいように思う。

保温調理鍋も火にかけるより余分に時間がかかったとしても放置できるから「手間短」道具のひとつ。コンフィなど温度管理の難しい料理も楽にできるし、甘酒づくりにも活躍してくれる。

忙しい日々の中でも、「普段できない手間のかかること」がひとつだけでもできたら、ちょっといい自分になれたような気になれるもの。時短視点だけでなく、手間短の発想での道具選び。ぜひ楽しみながらいろいろ試してみて。

ももせいづみ
東京都出身。暮らし、ライフスタイルを主なテーマとするコラムニスト。本コラムを含め、自著のイラストも自ら手がける。新刊に「お弁当にスープジャー」(辰巳出版)、「新版『願いごと手帖』のつくり方」(主婦の友社)など著書多数。

[日本経済新聞夕刊2020年8月18日付]

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