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東京サラヤの小椋国裕さん

東京サラヤの小椋国裕さん

「ヤシノミ洗剤」など環境に配慮した商品で知られるサラヤ(大阪市)。東日本の営業を担う東京サラヤ(東京・品川)の東京支店で働く小椋国裕さん(29)は、入社から一貫して消費者向けの洗剤やハンドソープなど衛生関連の商材を担当している。20代の若手ながら、東京支店の営業のエースだ。

関東のホームセンターやドラッグストア、スーパーマーケットといった量販店向けの営業が担当だ。看板商品のヤシノミ洗剤はもちろん、天然酵母を使った洗剤ブランド「ハッピーエレファント」、甘味料「ラカント」などを売り込む。

「人見知り」克服

小椋さんが何より大切にしているのは販売店とのコミュニケーションだ。「実はかなりの人見知りなんです」と小椋さん。入社当時は商談どころか、社内でのコミュニケーションにも苦戦していた。今も商談先との最初の顔合わせでは極度に緊張してしまうというが、場数を踏んで乗り越えてきた。

新規の開拓先では商品だけでなく、自分自身について知ってもらうことも強く意識している。どんなによい商品があっても、提案している自分がどんな人物か分からないと、商品への信用も生まれないと考えるからだ。

そのうえで販売店と一緒に売り上げの数値目標を設定し、達成に向けた具体的な戦略を練る「御取組(おとりくみ)会議」を繰り返し開く。販売店のサイトに商品の記事を掲載してもらうプロモーションを立案し、商品の継続販売につなげたこともある。

ある販売店の担当を外れた際に、その社の上層部から「小椋さんはよくやってくれた。後任は大変だね」と言ってもらえたのが忘れられないという。

失敗からも多くを学んだ。上司と一緒にある商談に臨んだ際、先方の出席者が急に増えた。用意した資料では足りず、商談後に上司から準備の大切さを説かれた。

「準備が8割、本番2割」。扱う商品の知識では誰にも負けない今でも、立地や顧客の年齢層など販売店ごとの特徴を事前に調べることを怠らない。こうした入念な仕込みこそが、店舗ごとの最適な売り場提案を生む原動力になるからだ。

サラヤは1952年の創業時から環境に配慮した製品を手がけてきた。現在、特に力を入れている「ハッピーエレファント」シリーズは、50年近いロングセラー商品のヤシノミ洗剤の流れを受け継ぐ洗剤ブランドだ。植物油と糖を栄養に天然酵母が発酵して生み出す洗浄成分「ソホロ」を使い、排水は水と二酸化炭素(CO2)に素早く分解される。ゾウを描いた容器も女性の人気が高い。

ただ、環境に優しいことがそのまま売れ行きに直結するわけではない。消費者の目線はどうしても価格や機能に向きがちだ。

環境面の利点示す

だからこそ営業担当の手腕が問われる。小椋さんはレジ袋の有料化でエコバッグの需要が高まるなど、環境に優しい商品の市場の広がりを様々なデータで提示。「環境に配慮した質の高い商品を求める顧客が集まる」というメリットを販売店に示すことで着実に理解を得ている。

こうした努力の結果、小椋さんが担当する販売店の売上高は前年比で10~20%成長。足元では新型コロナウイルスの感染拡大により、消費者の衛生対策への意識が高まっており、衛生関連商材の売り上げが伸びているという。

一方で新型コロナは商談の方法も大きく変えた。対面での商談に代わり、オンラインでの商談が増加。アポイントは取りやすくなったが、提案をする際の熱量が伝わりにくいといった課題も感じている。これまで培ったスキルに加え、相手の反応を常に確認するといったオンラインならではの工夫も必要と考える。

社内では若手社員の成長のきっかけになればと、自身の経験を積極的に伝えている。今後について聞くと「販売店によりメリットのある商品や売り方を提案したい。双方に利点があるウイン―ウインの関係を模索したい」と話した。

(斎藤さやか)

おぐら・くにひろ
2013年東京サラヤに入社。東京支店に配属後、一貫してホームセンターやドラッグストア、スーパーマーケットへの営業を担当。「ヤシノミ洗剤」をはじめとする消費者向けの商品を手掛ける。
[日経産業新聞 2020年8月13日付]

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