メキシコお菓子のくす玉1700円 ウイルス撃退祈願
メキシコでは誕生日やクリスマスといったイベントの際、お菓子を詰めたくす玉「ピニャータ」を割って祝う習慣がある。アニメや映画のキャラクター、動物を模倣したものが一般的だが、最近は一風変わったデザインが登場している。それがいま世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスだ。
首都メキシコシティの中心部にあるピニャータ販売店の店頭には、突起がついた黄緑色の球体がたくさんぶら下がっていた。最も大きい直径50センチほどのくす玉は350ペソ(約1700円)、サイズが小さくなる250ペソと150ペソの計3種類がある。
顧客の要望に応じて4月ごろに作ったのが最初だといい、その後も売れていることから店頭の目立つ場所に陳列されている。「ガレリ・フィエスタ」の販売責任者を務めるアラセリ・カルバハルさん(43)は「憂さ晴らしでたたこうと購入する人が多い」と話す。ウイルスの撃退を願ってたたく人もいるだろう。
新聞紙などを材料に作られているピニャータは、高いところからひもでつり下げて、目隠しした子供が棒でたたいて割る。中にはお菓子やおもちゃなどが詰まっており、落ちてくる仕組みだ。日本のスイカ割りの感覚に近い。
ピニャータには、その時々の時事のネタが反映されることもある。米国とメキシコの国境の壁が話題になった際には、トランプ米大統領の人形が作られた。今は新型コロナだ。
ウイルス以外にも、メキシコ政府で新型コロナウイルス対策の司令塔として、連日記者会見を担当する保健省のウゴ・ロペスガテル次官を模倣した人形(450ペソ)も売られていた。マスクをした医師の人形の製作も受注しているという。
両親とお店を訪れていたマスク姿のホセ君(4)は新型コロナのくす玉について「好きじゃないよ。怖いよ」と話していた。
子供の誕生日の際には女の子には空想の一角獣ユニコーンやディズニーのキャラクター、男の子には肉食恐竜のティラノサウルスが人気を集めている。
(メキシコシティ=宮本英威)
[日経MJ 2020年8月10日付]
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