冷蔵庫をのぞくと飲料ばかり。あとは冷凍食品と調味料。どうしようか。あっ、好物のなす漬けがあるじゃないか。なす漬けは夏の季語っぽい。歳時記で確かめるとその通り。一句つくれそうだ。

冷蔵庫も夏の季語。俳句は「一句一季語」が基本で、「季重なり」は初心者はやらない方がよいとされる。ただ、冷蔵庫そのものの季節性は薄れており、「別の季語と取り合わせるケースも増えてきている」(同書)。そこでこんな句を詠んでみた。

冷蔵庫今日もなす漬け冷えてあり

おうち俳句に熱中しているうちに、もう夕方だ。

コロナ禍で飲みに行く機会がめっきり減った。最近は1人で家飲みをすることが多いが、案外楽しい。この気分を俳句に仕立てられないか。

ビールとつまみを用意して、まず自分に乾杯。酒がどんどん進む。いつもだと、飲んでいるときは何も考えない。しかし、今日はこんな自分をどう俳句で表現しようか思案を巡らす。

俳句では、うれしい、悲しいなどの心情をストレートに表現してはだめ。至福の気持ちを表す言葉はないだろうか。そこで浮かんだのが「時忘れ」。

夏の宵ひとり家飲み時忘れ

おうち俳句はもともと夏井さんが、介護を受けているなどで外出が難しい人たちに向けて提唱した。しかし、コロナ禍で外出自粛を余儀なくされた人から「いまの時代にぴったりと受け入れられている」(朝日出版社)。2018年に発売の「おウチde俳句」は4刷で、累計販売部数は2万部を超えた。

駄句について夏井さんから「猫の句が一番描写ができています。ただ、季語の『日の盛』は一日で最も強烈な日差しの屋外を連想させるため、この句にふさわしくない」との講評をいただいた。センスのなさを痛感したが、「続けるうちに季語の細かなニュアンスは身体に染みついていきます」と励まされ、精進しようという気持ちになった。

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句会で腕試しも

「第1回おウチde俳句大賞」の授賞式(左が夏井いつきさん)

おうち俳句は1人でも楽しめるが、句会で自分の腕前を試したいという人もいる。そうした人たちを対象に始まったのが、夏井いつきさんが選者を務めるコンテスト「おウチde俳句大賞」だ。リビング、台所、寝室、玄関、風呂、トイレの6つのテーマから、家の中で感じたことや思ったことを、五・七・五のリズムにのせて自由に表現する。直近の第2回(応募期間2019年11月30日~20年1月31日)には約1万5000の応募があった。授賞式は9月に開かれる。

コロナ禍で、吟行へ出かけたり句会に集まったりするのが難しくなっている。俳句愛好者の裾野は広がっており、同大賞への応募者も増えそうだ。

(大橋正也)

[NIKKEIプラス1 2020年8月8日付]

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