Men's Fashion

マンダム「ルシードエル」 手ごろ価格で旬の髪を再現

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2020.8.31

マンダムが女性向けに展開するロングセラーブランド「ルシードエル」が好調だ。ヘアケア用のオイルトリートメントがけん引し、ブランドは右肩上がりで成長する。男性向けにワックスなどを展開していた「ルシード」から派生して誕生したブランドは、手ごろな値段と使いやすさを特徴に、時代の変化にあわせて形を変えて進化してきた。




男性ブランドからの派生商品を女性向けにシリーズ化

大阪・ミナミのなんばマルイ店。コクミンドラッグの一角には女性向けの「ルシードエル ヘアオイル」がずらりと並ぶ。配合したアルガンオイルは、深海1万メートルと同程度の圧力をかけた超高圧処理により、髪になじみやすくした。髪の毛1本ずつに薄く均一にコーティングでき、サラサラとしたさわり心地に仕上がるのが特徴という。

「男性向けブランドから派生した女性向けブランドは珍しい」――。ブランドマーケティング三部の平田達也グループリーダーはこう説明する。

ルシードエルは1993年に、男性向けに無香料の整髪剤を展開する「ルシード」の女性向けブランドとして生まれた。ルシードはバブル真っただ中、89年に誕生。香り付きの整髪剤が大多数の中で、男性向けに無香料の整髪剤を提案し、支持を集めた。

「意外にも利用者の約2割が女性だった」(平田さん)。香水と整髪料の香りを混ぜたくないとのニーズがあったという。こうした需要を背景に、女性向けブランドとして立ち上げたのがルシードエルだ。

ターゲットは20代前半の女性で、価格も1000円前後と手ごろな商品が中心だ。

98年、シャギーやレイヤーといった動きと軽さを出すヘアカットの人気が出ると、女性向けヘアワックス市場にいち早く参入した。

当時はまだ、「女性向けのヘアワックスは十分に浸透していなかった」(同)という。2000年代に入り髪の毛を染めることが人気になると、03年には自宅で手軽に染められるヘアカラーを発売した。色のバリエーションだけでなく、ツヤやしっとり感など質感も追求。歌手の安室奈美恵さんをテレビ広告に起用し認知拡大を図った。

サラサラとしたさわり心地のオイルトリートメントがヒット

ただ時間とともにトレンドも変わる。女性用ヘアスタイリング市場は次第に縮小し、売上高も伸び悩む。

逆境の中で開発したのが、14年発売の髪の毛ケア商品「ルシードエル オイルトリートメントシリーズ」だった。リサーチを繰り返し、髪の毛の傷みを気にする女性が増えていることをつかみ、商品化した。

美容院で販売するオイルトリートメントはべとつく質感のものも多く、「価格も比較的高めだった」(平田さん)いう。

そこで配合成分を追求し軽い質感でサラサラとしたさわり心地にし、1200円(税別)という手ごろな価格で販売した。これまでパッケージには使わなかった黒色や明朝体も取り入れて、期待される効果を説明。すると、SNS(交流サイト)など口コミで話題となり、同シリーズはルシードエルブランドのけん引役として成長した。

女性のニーズを捉えるため、担当者はヘアサロンに通う。商品開発の根幹は、美容師やターゲット層の顧客からくみとるニーズやトレンドの変化にあるという。

(斎藤毬子)

▼ルシードエルは、男性ブランド「ルシード」から派生し、1993年に女性向けで立ち上げたブランド。ヘアスタイリング剤、ヘアケア用品を展開する。無香料の整髪剤から始まり時代の変遷とともにヘアカラー、オイルトリートメントなど商品も変化。20代前半女性がターゲットで、手ごろな価格で気軽に使える商品を提案する。

[日経MJ 2020年8月7日付]