空調監視、現場の課題を因数分解 チームで手法を共有日立GLS 新元達之輔さん

日立GLSの新元達之輔さん
日立GLSの新元達之輔さん

家電販売の日立グローバルライフソリューションズ(GLS)は業務用空調を遠隔監視し、故障の予兆を診断する「エクシーダ」を成長の軸に据える。営業を担当する新元達之輔さん(31)は顧客の悩みを聞き、課題を「因数分解」することで実績を上げてきた。独自の手法はチームで共有。顧客はもちろん、社内の信頼も厚い。

同社の空調ソリューション事業部に所属する新元さんは、福岡県を中心とした九州で病院や食品・物流工場向けに空調・冷熱機器サービスの販売を手がける。

理系から営業へ

「IT(情報技術)は人を楽にする」。新元さんはこう考える。大学・大学院で情報技術工学を学んだが、「形あるものを作りたい」とメーカーを志望。就職活動の過程で「君は営業でも行けそうだ」と威勢の良さを買われ、自身も営業の道を選択した。

日立GLSのソリューションサービスであるエクシーダの仕組みはこうだ。まず空調・冷熱機器の運転データを詳細に収集。遠隔で運転状況を監視することに加え、蓄積したデータを分析して故障につながる微妙な変化を検知し、トラブルを未然に防ぐ。

「今日は暑いですね」。まずは雑談から入るのが、新元さんの営業の流儀だ。ざっくばらんな会話の後、顧客の口から現状の課題を引き出すことに力を注ぐ。日ごろの温度管理はどのようにしているのか、機器のメンテナンスで困っている点はないか――。見えてくる課題が、次のステップへの突破口になる。

昨夏のことだ。いつものように雑談を交えながら顧客の話を聞いていると、薬品を扱う物流倉庫では、製品によって温度管理の基準が異なり、現場の苦労が絶えないことが分かった。その時点での管理手法を把握し、問題を一つ一つの因数に分解して解決への最短ルートを探る。これが新元さんの営業スタイルだ。

本人はそれを「サービスを導入したらどうなるかの『絵』を顧客と一緒に描いていく」と表現する。遠隔監視のエクシーダを導入することで冷熱機器の管理がどう変わり、どんなメリットが生まれるのか。顧客と同じ目線で課題を見つめ、「導入後の職場の姿を明確に想像させる」。こうして今年3月、サービスの納入が決定した。

ある病院ではこんなケースがあった。一定の時刻になると看護師が温度計を見て室内温度を確認し、ノートに手書きで記録していた。「エクシーダなら空気を吸い込む場所の温度などを詳細に把握できる。人手に頼った確認作業も不要になる」

早速、遠隔操作で温度管理を自動化し、蓄積したデータで予兆診断もこなすサービスの利点を資料にまとめて提案した。何より大切にしているのは顧客目線だ。

「エクシーダは職場の省人化に役立つ。浮いた人材をより付加価値の高い業務に充てることができる。ただ、まだ世の中に浸透していない」

だからこそ、次に着目するのは「質の高い営業手法を定型化し、少しでも多くのお客様に提案していく」ことだ。具体的には「売り方の教科書を作りたい」と新元さん。

すでに「部署内で営業提案の方法を共有し、みんなでブラッシュアップしている」と話す。営業の土台となる部分を定型化し、その上で各自が独自性を発揮していく。トークが苦手な社員でも、同社のサービスの特徴をうまく伝えられるように支援する。

社内の信頼厚く

こうした取り組みに社内からも信頼は厚い。システムソリューション企画部の部長代理、進藤雅文さんも「営業は問題の解決に向け、顧客に寄り添って提案できることが重要だ」と指摘。そのうえで、新元さんを「ソリューション型の営業の先駆者だ」と評価している。

新型コロナウイルスの感染拡大もあり、遠隔技術への注目度は一段と高まっている。「人を介さない作業、空調を見守るシステムは、これからますます必要になる」と新元さん。人を楽にするITサービスの普及に向けて、挑戦は続く。

(河端里咲)

しんもと・たつのすけ
大学院で情報技術工学などを専攻後、2014年に日立アプライアンス(現・日立グローバルライフソリューションズ)に入社。九州支社で業務用空調機などの営業を担当してきた。

[日経産業新聞 2020年8月3日付]


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