皮パリッ、身はふっくら 愛知・三河一色産ウナギ

「うなぎの兼光」では外はパリパリ、中はふんわりと焼き上げる
「うなぎの兼光」では外はパリパリ、中はふんわりと焼き上げる

これから夏本番を迎える。暑くてバテそうな時はウナギを食べて精をつけたい。愛知県は国内で2番目に多いウナギの生産地だ。土用の丑(うし)の日に合わせ、「三河一色産」のブランドで知られる西尾市一色町を訪れた。

名古屋から車で1時間半ほど。三河湾に面した一色町は生産量で県内の7割、国内の2割を占め、市町村別で全国トップクラスの産地だ。至る所に養殖用ビニールハウスが広がり、道路脇にウナギ屋の看板が立ち並ぶ。

県外から多くの客が訪れる「うなぎの兼光」ののれんをくぐった。名物は「うな肝丼」で、職人が1本ずつ手焼きした蒲(かば)焼きと8匹分の新鮮な肝をぜいたくに使用。しょうゆベースのタレの香りが食欲をそそり、一口食べると芳醇(ほうじゅん)で香ばしい味が口内に広がる。表面はこんがりなのに、身はふっくら肉厚で柔らかい。

一色町出身の店長、加藤朝也さん(35)は「毎朝いくつかの養殖池で取ったウナギを試食し、一番良いものを使っている」と胸を張る。愛知の蒲焼きは「地焼き」と呼ばれる蒸さない関西風だ。蒸してから焼く江戸風と違い、外はパリパリ、中はふんわり。肝は濃厚な味で歯応えがあり、疲れが一気に吹き飛んだ。

ウナギを大きさごとに選別する(一色うなぎ漁業協同組合)

温暖な気候と矢作川の清流に恵まれた同町でウナギの養殖が始まったのは1904年ごろ。59年の伊勢湾台風で農地が水浸しになると、多くの地主が養殖池に転用した。全国唯一の養殖用水道も整え、地場産業に育てた。ピーク時より減ったが、今も100近い業者が養殖を営む。

一色うなぎ漁業協同組合の山本浩二組合長(67)は「一色町では本来生息する自然の河川に近い環境で育てている」と話す。夏以降は「新仔(しんこ)」と呼ばれる1年未満の若い養殖ウナギが出回り始める。皮が薄く、身は脂がのって食べごろだという。

「うなぎ処いっしき」では名古屋めしの代表格「ひつまぶし」も味わえる

漁協直営店「うなぎ処いっしき」で焼き場担当の斉藤慎吾さん(31)は「備長炭は火力が強く、パリパリ感が出やすい。タレを3度付けして味を染み込ませるが、表面が焦げるぎりぎりの加減に焼くのが難しい」と語る。ウナギ調理に必要な年数は「串打ち3年、焼き一生」とされる。「皮パリ身ふっくら」には職人技が欠かせない。

「みかわ三水亭」でも「うな丼」や「ひつまぶし」などを堪能できる。新型コロナウイルス禍が落ち着いたら、新鮮な味を求め、産地を訪ねてみてはいかがだろうか。

<マメ知識>本来の旬は秋冬
土用の丑(うし)の日にウナギを食べる慣習は江戸時代に始まった。夏にウナギが売れず、ウナギ屋の店主が困っていたところ、当時の知識人、平賀源内が「本日、土用の丑の日」と張り出すよう助言した。丑の日に「う」から始まる食べ物を食すのは縁起がよく、夏バテ対策にもなるとして定着した。
だが、ウナギの本来の旬は秋冬。冬眠に備え、餌をよく食べて脂を蓄えるためだ。現在は国内消費の99%が養殖物のため、通年で味わうことができる。

(名古屋支社 林咲希)

[日本経済新聞夕刊2020年7月30日付]

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