「クレームつぶし」の問題接客 店頭で気づいたゆるみロフト 安藤公基社長(下)

■2008年、仙台ロフトの館長になる。

家具のマーチャンダイザーとして3年にわたって管理職を務めた後、初めて売り場のトップになりました。家族意識を強めて逆境を乗り越えた経験を生かし、まずは仙台ロフトの店舗従業員と徹底的に話そうと決めました。

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着任したころの仙台ロフトは客の来店頻度が伸び悩み、売り上げの横ばいが続いていました。流行に合わせて売り場を変えるロフトの特徴が、地域の方に伝わっていなかったのです。

買わなくても行きたくなる店にするには、現場の販売員がカギです。可能な限り店頭に立ってレジ作業や品出しに参加し、イベントなどにも顔を出して「互いに話しやすい関係」をつくっていきました。直接会話することで、徐々に価値観が浸透していきました。

■店頭に立つからこそ問題が見える。

デスクに座っていては分からないことも、店頭ならすぐに目に入ります。

ある日、信じられない光景を目撃しました。レジを担当する販売員が、マグカップを買いに来たお客さんに傷の有無を確認するよう求めていたのです。

多くの従業員に仙台からの門出を祝ってもらった(中央が安藤氏)

ロフトでは、店頭に陳列する商品をレジに直接持ち込むので、会計前に傷や汚れがないかを確認する必要があります。新品を倉庫から出して販売する百貨店とは異なります。

販売員に悪気はなかったのでしょうが、ふと漏らした一言が気になりました。「こうすれば後でクレームが来ない」。確認する目的が、いつの間にか変容していたのです。

小売店では気を緩めると、こうしたことが起きてしまいます。クレームがなければ何でも売っていい、というのは間違いです。「最後まで責任を持って」と諭しつつ、「一事が万事」との考えを再確認しました。

■上司でなくなっても関係は続く。

仙台ではほぼ店頭に出ていたので、アルバイトやパートも含めて一体感がありました。10年に大阪へ異動する時に大規模な送別会を開いてもらったことは、今も心の支えです。

だからこそ、半年後に発生した東日本大震災は衝撃でした。会社よりも先に個人として動き、カセットコンロや衛生用品など、大阪で手に入る物資をかき集めて東北に送りました。

単なる上司と部下の関係だったら、これほど素早く行動できなかったでしょう。従業員全員の顔と名前を覚えていたからこそ、家族を助ける感覚で動けたのだろうと思います。

しっかり人と向き合って、一緒に仕事をする。この感覚は社長になった今でも大切にしています。

あのころ……

2010年代、小売業はアマゾンなどネット大手との競争に巻き込まれる。各社はプライベートブランドの展開や、競合他社との連携を強めていく。ロフトもセブン&アイ・ホールディングスの通販サイト「オムニセブン」に加わった。

[日本経済新聞朝刊 2020年7月28日付]

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