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ワタミと協業、和牛焼肉店 農場から店まで一気通貫

日経MJ

カミチクグループの上村昌志代表
カミチクグループの上村昌志代表

「このままでは日本の畜産農家は生き残っていけない」。こう話すのは、ブランド和牛食べ放題も選べる焼肉店「かみむら牧場」をワタミと組んで多店舗化に乗り出したカミチクグループの上村昌志代表だ。

和牛の生産は現在、じり貧だ。和牛生産には子牛を増やして出荷する「繁殖農家」と、子牛を仕入れて育てて肉牛として出荷する「肥育農家」がある。肥育農家が牛を育てる期間は20~21カ月かかる。

ここ数年、子牛の競り値は高騰を続けていた。東京五輪・パラリンピックに伴う需要拡大を見込んでいた約1年半前から、「子牛の値上がりが止まらない」と生産者の声を耳にしたものだ。

そこへコロナショックが来た。肥育農家はえさ代、人件費が高騰するなか、五輪需要を期待して辛抱して和牛を育てていたが、コロナ禍で飲食店の市場がすでに縮小した。

高級店での会食や宴会も中止となれば、和牛の在庫はだぶつき、価格は下がるばかり。子牛を高く買い、売値がつかない肥育農家はすでに大赤字だ。繁殖農家も出荷適齢期で売れなくなるので、損を覚悟で出荷せざるを得ない。いま和牛に関わる全ての人が苦しんでいる。

「和牛を安売りしたいわけではない。世界で類を見ない和牛の素晴らしさを知ってほしかった」。上村代表はかみむら牧場を始めた理由をこう話す。

ただ、こうした取り組みができる畜産生産者は多くはない。なぜカミチクグループはできたのか。餌、繁殖、肥育、酪農、食品加工、飲食店経営など全て一貫して6次化に取り組んで畜産の流通を知り尽くしているからだ。

さらに価格を抑えておいしい肉をと考え、「南国黒牛(なんごくくろうし)」を開発した。これはオーストラリア産「豪州Wagyu」の子牛を輸入し、鹿児島などで肥育する肉牛だ。

豪州Wagyuの子牛の価格は国産子牛よりも50~60%安く仕入れられるが、独自の餌と肥育方法により和牛と比べても遜色はない。かみむら牧場では南国黒牛コース3580円(税別)で提供される。

かみむら牧場では和牛の「牛骨ラーメン」も食べられる

餌にもこだわる。九州の耕作放棄地で牧草や飼料米を栽培し、地場産業の焼酎の搾りかすも加え自社工場で飼料をつくっている。良質な血統の種牛まで自社で所有するので完全に自己完結できる。

カミチクグループは外食部門もあり東京・大阪で焼肉店も経営する。それでもワタミと組んだ理由について、上村代表は「ワタミの渡辺美樹会長が自分と同じまなざしで日本の農業・畜産の未来を見ていると感じたから」と話す。ワタミは自社で農場を運営しているという共通点もあった。

「かみむら牧場への和牛出荷だけでは、もうけはない。だが宅食サービス約500拠点、居酒屋約500店を運営するワタミグループならスネや骨など、焼き肉以外の部位を活用できるので牛一頭を使い切れる」と上村代表は語る。

ワタミのノウハウで店舗をパッケージ化することで、海外進出ができ、和牛の輸出にもつながる。

台湾、ベトナムへの海外出店も決定済みで、引き合いも多い。厳しい立場の生産者と飲食店の組み合わせが相乗効果を産んだ。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“美味しい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2020年7月24日付]

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