コロナの制約が価値を生み出す 未来を変える行動とは

コロナは世界をどう変えるのか(画像=PIXTA)
コロナは世界をどう変えるのか(画像=PIXTA)

新型コロナウイルスは世界をどう変えるのか。様々な分野の識者の声を集め、感染症とグローバリゼーション、国家や科学技術との関係を問う書籍の出版が相次いでいる。

コロナ後を見据えて、さまざまな分野の専門家の見解を集めた本の刊行が相次ぐ

多くの識者が言及し、議論の土台となっているのが、歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の論考だ。科学や医学の情報を共有し、グローバルに団結して危機を克服しようと呼びかけるハラリ氏。同時に「全体主義による監視社会か、市民へのエンパワーメント(権限委譲)か」、「国家主義のもとでの孤立か、グローバルな連帯か」という選択肢を示し、全体主義や国家主義の手法を選ぶと「後々大変なことになる」と警鐘を鳴らす。社会学者の大澤真幸氏は『思想としての〈新型コロナウイルス禍〉』(河出書房新社、2020年5月)で「国民国家を横断した連帯ということに見合った、グローバルなレベルの社会の構造的チェンジが必要」とハラリ氏に賛同する。

感染症と国家の関係を論じた哲学者、ミシェル・フーコーに注目する識者も多い。科学史が専門の塚原東吾氏は「緊急特集 感染/パンデミック」と題された「現代思想」5月号(青土社)でフーコーの権力論を踏まえ、「科学技術は今や全体主義的な監視社会の道具であり、どのように市民の手に取り戻すかという問いが必要。単にグローバルな連帯を訴えるだけでは、惨事便乗型の資本主義が活性化される危惧もある」とハラリ氏に異議を唱える。

出口治明・立命館アジア太平洋大学学長は『見えてきた7つのメガトレンド アフターコロナ』(日経クロステック編、日経BP、20年7月)で感染症はグローバリゼーションの「ダークサイド」といえるが、各国が協調して危機を乗り越えるためにもグローバリゼーションの見直しは「とんでもないこと」と主張する。同書は出口氏の見解を下敷きにコロナ後を象徴するキーワードとして「制約が生み出す価値」を挙げ、新技術やサービスに彩られた近未来図を描き出している。

一方、経済アナリストの森永卓郎氏は『新型コロナ 19氏の意見』(農山漁村文化協会編・発行、20年5月)で「コロナ禍は行き過ぎたグローバル資本主義への警告」と指摘し、グローバル資本主義の基本理念である「大規模・集中」から「小規模・分散」への転換を求める。古沢広祐・国学院大学客員教授も分権・自立システムへの修正を訴えている。

コロナ禍のもとで、どこに軸足を置き、どう行動するのか、一連の書籍は私たちに選択を迫っている。

(編集委員 前田裕之)

[日本経済新聞2020年7月25日付]

アフターコロナ 見えてきた7つのメガトレンド

出版 : 日経BP
価格 : 1,980円 (税込み)


新型コロナ 19氏の意見: われわれはどこにいて、どこへ向かうのか

出版 : 農山漁村文化協会
価格 : 1,100円 (税込み)


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