医師数の格差、どう手当て 東京は新潟・岩手の1.9倍

医師少数とされた千葉県では臨床研修医の受け入れを積極的に進める。08年に県や県医師会、大学病院が協力してNPO法人「千葉医師研修支援ネットワーク」を設立。3者が全県で連携できる体制を作った。

研修医を受け入れる36病院が研修プログラムを公開するなど情報発信に力を入れ、研修医の人数は設立当初の280人前後から「18年度に430人ほどまで増えた」(同ネットワークの石川広己常務理事)。

大学医学部で養成した医師に地域に残ってもらう取り組みも欠かせない。都道府県が医学生に奨学金を貸し、医師免許取得後も地域に残れば奨学金の返還を免除する「地域枠」の設定が代表例で、全国の医学部で導入されている。

岩手県は特に医師が少ない県北地域や沿岸地域の公的医療機関に、臨床研修後に2年間勤務することを条件とした地域枠の設定を始めた。21年度からこの条件での配置が始まる予定だ。

岩手、青森、福島、新潟、長野、静岡の6県知事は1月、「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」を発足させた。現在は12県知事からなり、今後、制度改革を国に要望する。岩手県の達増拓也知事は「都会の医師が地方に来て病院勤務にあたる制度を作ってもらいたい」と、県境を越えた偏在の是正措置を求めていた。

全国知事会などもこうした対応を求める要望を出している。厚労省は若手の医師に医師少数の地域で一定期間、勤務を義務付ける仕組みも検討する。職業選択の自由の観点から強制配置は困難だが、何らかの資格要件に追加するなどが想定される。改善が進まなければ、より強い措置を求める声が広がる可能性がある。

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都道府県の負担重く 医療行政、三位一体の改革で

「三位一体の改革」――。厚生労働省は2040年に向けた医療提供体制の改革をこう呼ぶ。偏在対策はその1つで、残る2つは人口動態にあわせて地域の病院のベッドを縮小したり再編したりする「地域医療構想」と、24年度から導入する勤務医の残業時間の上限規制など「働き方改革」を指す。

3つは密接に関わり合う。働き方改革は医療の供給を絞ることになるため、病院の再編統合を通じて医師を集約する必要が生じる。病院の集約で大学病院からの派遣先が減れば、医師の少ない地域への派遣につながる。

いずれも都道府県が大きな役割を果たす。ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員は「医療行政の都道府県化が進んでおり、複雑な調整が求められている」と懸念を示す。改革の実現には都道府県への積極的な支援が必要になる。

(新井惇太郎)

[日本経済新聞朝刊2020年7月27日付]

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