アイスクリームを作ろう 手でかき混ぜ、葛粉でとろみ
暑い日に気持ちまで涼しくしてくれるアイスクリーム。塩と氷を使い、実験気分で手作りできる。簡単に手に入る材料でおいしく作るコツを聞いた。
ジュースなどを製氷皿で凍らせ、即席アイスを作った経験がある人もいるだろう。できあがったものはそれなりにおいしいものの、市販品のなめらかさには及ばない。
「アイスクリーム作りでは、原料に書かれていない『空気』が重要だ」。イタリアで修業し、国内外でジェラート作りを教えるジェラテリアアクオリーナ(東京・目黒)の店主、茂垣綾介さんはこう話す。
電動は使わず 葛粉でとろみ
ジュースをそのまま凍らせてジャリジャリするのは、氷の結晶が大きいためだ。かき混ぜながら空気を入れると結晶を小さいまま保つことができ、食感がよくなる。茂垣さんは「牛乳などのたんぱく質が空気を取り込む役割を果たす」と説明する。
力強く泡立てる必要はない。電動のハンドミキサーを使いたくなるが、必要なのは手動の泡立て器。凍ったところから少しずつかき混ぜることで、細かい氷の結晶をたくさん作り出せる。
材料は牛乳や生クリーム、砂糖。これに葛粉とスキムミルクを加え、アイスクリームのベースとする。
なぜ葛粉とスキムミルクを入れるのか。葛粉は水分に溶かすととろみが出て、「アイスクリームをなめらかにする効果が高い」(茂垣さん)。スキムミルクはたんぱく質が豊富なため、かき混ぜるときに空気を取り込みやすく、食感もしっかりする。
砂糖は好みの甘さに加減してもいい。甘みづけのほかに、水分が氷になる温度を0度以下にする氷点降下の働きがある。凍らない部分が残るため、0度以下なのにやわらかい。口に含んだとき、ひんやりなめらかに感じるのは、氷点降下のおかげだ。「砂糖はアイスクリームに不可欠」と茂垣さんは強調する。
牛乳はアイスクリームの味わいに直結する。低脂肪乳ではなく、成分無調整の方がコクが出る。タカナシ乳業の長井裕子さんによると、殺菌法が高温でも低温でも栄養成分は変わらない。ただ、たんぱく質が変性する高温殺菌より「低温殺菌の方がほんのり甘く感じられるのでは」と長井さん。好みの牛乳を選ぼう。
材料は小鍋で温め、十分溶かすのがポイントだ。粉末類はよく混ぜておくとダマにならない。「このひと手間で仕上がりに違いが出る」(茂垣さん)。中火にかけ、泡立て器で軽く混ぜよう。ふつふつとさせたらボウルに移し、氷と水をはったボウルに5分ほどあて、冷やす。
氷塩水で冷却 完成まで12分
次は氷と塩を使った作業だ。ボウルに氷を入れ、塩をかける。さらに水を加えてスプーンで軽く混ぜる。これに材料が入ったボウルをあて、かき混ぜ始める。ここで利用するのは、塩の氷点降下の作用だ。氷と水だけでは0度にしかならないが、塩が入ると温度はどんどん下がっていく。ボウルは必ず熱伝導のいいステンレス製を使おう。
6分くらいすると側面や底が凍り始め、材料がもったりしてくる。コツは、凍った部分を泡立て器でかきとるように混ぜること。こうすることで、氷の結晶が均一になる。
ひとやすみしたいときは、氷塩水からボウルを外そう。かき混ぜずに凍らせると、結晶が大きくなり、なめらかさが失われてしまう。
10分ほどで全体にツヤが出てクリームのような感触になる。すぐに食べないなら、この時点で冷凍してもいい。別の容器に移すときは、容器を冷蔵庫で冷やしておくと、温度差で溶けて結晶が壊れることがない。できたてを食べるならあと2分、泡立て器が「重い」と感じるかたさになり、ツヤが出るまでがんばろう。
このアイスクリームはアレンジも自由自在だ。抹茶を加えれば抹茶アイスになる。粉末や刻んだチョコレート、シナモンなどのスパイスは、ベースを作るときに他の材料とともに小鍋で温め溶かす。砕いたクッキーをアイスクリームが出来上がる直前に混ぜ込めば、クッキーアンドクリームの味になる。「果物を最後に入れてもいい」(茂垣さん)
自宅で過ごすことが多くなりそうな今年の夏。子供と一緒に氷点降下の作用を実感して作れば、ちょっとした理科の授業にもなる。休日の楽しみとして、挑戦してみてはいかがだろう。
(ライター 松野 玲子)
[NIKKEIプラス1 2020年7月25日付]
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