40歳未満の「AYA世代」患者に がん在宅療養を支援

40歳未満の末期がん患者を対象に、在宅療養に必要な福祉用具や訪問介護の利用料を助成する自治体が増えている。40歳未満は介護保険制度を利用できず、特に18~39歳は医療費の公的助成も対象外で、制度の「谷間」世代となっている。住み慣れた環境で家族と過ごしてもらうのを後押しするのが目的だ。

愛媛県は2020年度から20~39歳のがん患者の在宅療養を支援する助成制度を始めた。対象は回復の見込みがない末期がんと医師が診断した患者。末期がんは介護が必要になる場合が多く、福祉用具の購入やレンタル料、訪問介護の利用料などを補助する。利用者は1割を自己負担し、県と居住する自治体が1カ月あたり最大5万4000円を支払う。

担当者は「地元の患者団体から要望があった。望ましい最期を迎えられるよう支援体制を整えたい」と話す。6月時点で5市町で利用でき、今後増やしていく考えだ。

末期がん患者は家族と一緒に過ごし、住み慣れた自宅での療養生活を選ぶケースが多い。在宅療養中は訪問入浴などの介護サービスのほか、介護用ベッドや車いすなどの用具の購入・レンタルが必要になる。こうした費用は1カ月あたり数万円に上り、医療費もかかることになる。

40歳以上の末期がん患者が在宅療養する場合、介護保険制度を利用できる。18歳未満の小児がん患者には医療費の助成制度がある。「AYA世代」(15~39歳)と呼ばれる大半が該当する18~39歳はこうした公的な助成制度がない。家族の経済的な負担を考慮し在宅療養を避けるケースがあるとされ、助成制度を設ける自治体が出ている。

制度の先駆けとなったのは兵庫県。各地の自治体の助成制度のモデルともなっている。15年度から月額5万4000円を上限に県と市町村が半分ずつ負担する形で、末期がん患者の在宅療養の支援を始めた。19年度時点で県内の41自治体のうち24自治体が参加し、8市町で32人が利用した。

子どもを対象に含める自治体もある。

16年度から20~39歳の末期がん患者を対象に助成制度を導入した横浜市は20年度、20歳未満も利用できるようにした。小児がん患者にも広げたのは「在宅療養で使う福祉用具のレンタル費を補助するのが目的だ」(市の担当者)という。

18年度から助成制度をスタートさせた鹿児島県も子どもを含む40歳未満が対象だ。県と市町村が最大7万2000円(月額)を負担する。19年度の利用者は13人。20年度は43自治体のうち37自治体が参加している。

「市町村は財政負担が生じるが、利用者は多くない。制度の趣旨を理解してもらうよう努める」(県の担当者)として県全域に広げることを目指している。

全国がん患者団体連合会の松本陽子副理事長は「AYA世代のがん患者は養育費や住宅ローンを抱えがちで、自宅で療養を続けるには経済的負担が重い。公的な制度の谷間にある世代をつくってはならない」と訴える。

国による制度整備については「介護保険の対象年齢を引き下げるなど抜本的な改革が必要で難しい」として自治体ごとに助成制度を設けるのが現実的との見方を示す。「自治体間での問題意識の差が大きい。希望する療養が実現できるようにAYA世代に支援の手を差し伸べてほしい」と話している。

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25歳から患者急増

15~39歳が該当する「AYA世代」は思春期(Adolescent)と若年成人(Young Adult)からつくられた言葉だ。国立がん研究センターと国立成育医療研究センターが2019年10月に発表した報告書によると、2016~17年に全国のがん診療連携拠点病院など844施設で、がんと診断されたAYA世代の患者は約5万7千人に上る。

報告書によると、AYA世代のがんは25歳を過ぎると飛躍的に増え、30代の発症が約75%を占める。女性の子宮頸(けい)がんや乳がんが増えることが要因だ。20~30代のがんでは女性が約8割に上る。両センターがAYA世代のがんについて分析したのは19年10月の報告書が初めてだ。

AYA世代は就職や結婚といった人生の節目の時期とも重なる。治療と両立していく負担は重いとされ、支援する動きが広がっている。

(安田龍也)

[日本経済新聞夕刊2020年7月22日付]

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