ライフスタイルを提案 部下は家族、逆境乗り切るロフト 安藤公基社長(上)

都内の「ロフト」店舗
都内の「ロフト」店舗
■2005年、ロフトでお荷物扱いだった家具事業を任される。

当時のロフトはスキンケアなどの健康雑貨や文具を手掛け、人気のスポットになっていました。対照的に苦戦したのが家具です。新宿ロフト(当時)でデザインにこだわった高価格の家具を販売したのですが、大失敗に終わりました。

社内での風当たりが日に日に強まる中、複数のバイヤーをまとめるマーチャンダイザーに任じられ、私が立て直しを担うことになりました。新宿店にいた私は、家具を売る厳しさが身に染みています。そこで考えたのは、ロフトの「原点」に立ち返ることでした。

ロフトの中心顧客は若い女性です。価格は手ごろでなければなりません。女性1人で組み立てられるかも重要です。家具をただ並べるのではなく、雑貨やカーテンなどと組み合わせ、ライフスタイルに応じたセット提案を心がけました。「いるだけで楽しい」という、ロフトらしさを前面に出すことにしたのです。

■業績が上向いた直後、品質トラブルに直面する。
あんどう・こうき 81年中大法卒、西武百貨店(現そごう・西武)入社。08年仙台ロフト館長、15年取締役。16年から現職。61歳。東京都出身。

ライフスタイルを提案するには、売り場の方向性やトレンドも決める必要があります。部下のバイヤーはもちろん、販売員などの協力が不可欠です。上司と部下というよりむしろ、家族のような関係を心がけたことで業績は回復。社内評価も高まっていきました。

着任から約1年たった06年5月、顧客の家で照明器具が落下するという事故が起きました。幸いケガはありませんでしたが、既に20~30台販売していたため、新聞広告を通じて回収に取り組みました。

徹底的に原因を調べたところ、部品の耐熱性に問題があり、コードが切れたことが判明しました。取引先が製造委託した中国メーカーが、仕様と違う素材を使っていたのです。

■家族同然の部下のために頭を下げる。

本社近くの会議室で「懺悔(ざんげ)の会」が開かれました。家具事業の社内評価は落ち、顧客対応に追われて体調を崩す部下も出ました。

約80人のバイヤーや上司の前で謝罪し、事故原因を説明しました。取引先の不注意とはいえ、商品を仕入れた以上は私の責任です。家族同然に仕事をしてきたからこそ、部下たちのために頭を下げることが管理職の務めだと感じました。

この場面は今も鮮明に覚えています。完璧な品質管理は不可能ですが、事故が起きないとの確信を持たなければ商品は販売できません。万が一事故が起きたときも隠さず、原因を真摯に追究する。今ではロフト自身で生産委託するプライベートブランド(PB)も増えましたが、事故は起きていません。

あのころ……

00年代の小売業では衣料品の「ユニクロ」や家具の「ニトリ」などSPA(製造小売り)のビジネスモデルが台頭、価格と豊富な品ぞろえだけで勝負できる時代が終わりつつあった。ロフトも持ち味の「面白さ」に加えて04年にデータ活用に乗り出すことでV字回復を果たした。

[日本経済新聞朝刊 2020年7月21日付]


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