トルコパン250グラム23円 人気のサバサンドにも
トルコで5月末まで続いた新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出制限中、食品スーパーさえ閉鎖された週末に薬局と並んで営業を続けていたのがパン屋だった。最寄りのパン屋に徒歩で行くことは許され、パン屋の組合も配送用の車両を仕立てて近所に配達した。トルコ人の食生活の基本にパンがある。
トルコ語でパンは「エキメッキ」と総称し、なかでもラグビーボール型のバタールのようなパンが基本的だ。エキメッキといえばこうしたパンを指すこともある。きつね色の外側はぱりっとして、中はもっちり。日をまたぐと食感が劣化するため、都市封鎖中も供給を止められなかった。
エキメッキは食事の付け合わせとして、オリーブオイルや料理のソースなどをつけて食べる。食堂などでは無料で供していることが多い。日本人観光客の間ではエキメッキにサバを挟んだ「サバサンド」が人気だ。
狭義のエキメッキの価格は、地域の業界組合ごとに協定で決まる。最大都市イスタンブールでは過去約5年間、おおむね250グラムが1.25リラ(約20円)だったのが、2019年5月に現在の1.5リラ(約23円)に値上がりした。地方では若干安いこともある。
トルコはインフレが激しく、パン業界ではもっと値上げしないと経営が苦しいとの声は根強い。だが値段は業界組合だけでは決められず、政府や地方自治体などと協議する必要がある。政府統計局が発表するインフレ率(12%)に対して、イスタンブールの業界組合トップは今月、小麦の値段は過去5年で2倍に上がったと地元紙に訴えていた。
エキメッキがトルコ人の生活文化に深く根ざしていることを示すエピソードに「棚の上のエキメッキ」がある。購入する際、余分な代金を支払うことでパン屋にエキメッキがプールされて、生活にゆとりがない人が、無料で受け取れる仕組みだ。
パン屋のカウンターにはその日プールされている個数を示す掲示板がよくみられる。施しを推奨するイスラム教と、共同体の助け合いを重視するトルコらしい習慣だ。
(イスタンブール=木寺もも子)
[日経MJ 2020年7月20日付]
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