中国豚肩ロース肉1キロ1775円 コロナで高値の花
「豚肩ロース塊、400グラムで46.8元(約710円)」。7月初、アリババ集団の生鮮スーパー盒馬(フーマー)での店頭価格だ。日本とさほど変わらない水準で、決して手ごろではない。加えて消費者の買いの手を鈍らせる要因がもう1つある。落ち着きかけていた値段が、再度じりじりと上昇しているのだ。
農業農村省のデータでは豚肉の卸売価格は1カ月前に比べ2割弱も上昇した。春先からの値下がり傾向が終息し、再び最高値を伺っている。
2018年夏に広がったアフリカ豚熱(ASF)は中国の物価にも大きな影響を与えた。中国の農村では今も副業に豚や鶏を飼うのが一般的だ。南京市郊外の六合区では子豚を買い入れて半年ほど肥育、売却するのが貴重な現金収入だった。鶏は自家消費、野菜や米は近隣との物々交換でそろうという。こうした地産地消は食品価格の安定に大きく寄与してきた。
だがASFのまん延で小規模な養豚は多くの地域で禁止されたままだ。中国全体の飼育頭数はピークをなお2~3割ほど下回る。中国では新型コロナウイルスが落ち着き、政府は大規模な財政支出や金融緩和で景気の下支えに動く。経済活動が再開し外食の機会も増えるなか、需給が再び崩れ始めている。
新型コロナの「時間差」もある。中国は6月末までにブラジルやカナダ、ドイツなど8カ国からの食肉輸入を停止した。5月にオーストラリア産の輸入を部分的に停止した際には、新型コロナの発生源の調査を求める豪州への意趣返しとの見方が浮上した。
もちろん真相は分からない。米中貿易摩擦に際しての米国の制裁関税を、中国は「自由貿易への脅威」などと批判してきた。同様のことを中国が仕掛けたとしたならば、報いは自身に返ってくる。昨年来、中国は豚肉の輸入を大きく増やしてきただけに、物価への影響は否定できない。
500グラム当たり15~20元が共通認識だった豚肉価格は40元超えが一般的になった。加えて豚肉値上がりの「第2波」が押し寄せるとすれば、本調子には遠い中国の消費の重荷が増えることになる。
(上海=張勇祥)
[日経MJ 2020年7月12日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。