Tシャツの黄ばみ落とし つけ置き+すすぎ2回
洗濯家 中村祐一
Tシャツ1枚で過ごす日も多くなる季節。使い勝手がよいアイテムだが、肌に直接触れるため、繰り返し着ていると、襟ぐりの黄ばみや黒ずみが気になってくる。こうした汚れの多くは皮脂によるもの。白いTシャツが黄ばんでしまうと、諦めて捨ててしまう人も少なくないだろう。しかしひと手間かけるだけでよみがえるかもしれない。ぜひ試してほしい。
Tシャツの黄ばみは普通にもう一度洗うだけではほとんど落ちない。だからこそまずは下洗い。40~50度の湯に粉末洗剤を溶かし、つけ置き洗いをしてみよう。いつもの洗濯で落ちずに蓄積し、時間がたったシミ汚れには粉末の漂白剤、過炭酸ナトリウムを併用するとさらに効果的だ。30分ほどつけておけば、汚れもかなり落ちやすい状態になるだろう。
あらかじめつけ置きをしておけば、洗濯機で洗うのは5分もあれば十分だ。前日につけ置きだけしておき、翌日に洗濯機を回すのもよい。すすぎは2回。最近は1回で済ます人も多いが、洗剤や汚れをすすぎによって水に移し切る前に洗濯を終えると、においや黄ばみの原因になる。特に白いTシャツではすすぎが重要になる。
着続けていて、首回りが伸びてくる経験はないだろうか。普通に洗うだけだと、繊維の張りが徐々になくなってきて、形崩れしやすくなる。そこですすぎを終えたらもうひとつ手を加えてほしい。繊維が失ったものを戻す「加工」と呼ぶ工程だ。
やわらかくする柔軟剤がよく知られているが、ここではかたく仕上げる「のり剤」の出番。水3リットルに5ミリリットル程度を目安にのり剤を溶かし、洗濯後のTシャツを浸す。のり剤の量は自分好みのかたさになるように調整しても大丈夫だ。
次に脱水だが、Tシャツでは長い時間かけないのがポイント。30秒から1分ほど脱水し、形を整えて干すようにすればシワが少なくるはず。ちなみにハンガーは肩の部分が厚めのものを選ぶと、跡がついたり、形崩れしたりしにくいのでオススメだ。
さらに一段上の仕上がりを目指すなら、乾いた後にアイロンを当てておこう。首元が伸びてしまいがちなので、上から押さえつけるようにしていく。Tシャツにアイロンをかけるというと驚かれる場合があるが、アイロンを使って形を整えて仕上げれば、Tシャツの寿命も延びると思う。
「お気に入りのTシャツだったのに黄ばんでしまった」「何度も着ているうちにヨレヨレになってしまい、もう着られない」。そんな悩みをよく耳にする。しかし漂白剤を使ってのつけ置き、のり剤の活用などちょっとした工夫で仕上がりは全く変わる。洗濯のコツをつかみ、お気に入りのTシャツを着るのを楽しんでほしい。
1984年生まれ。クリーニング会社「芳洗舎」(長野県伊那市)3代目。一般家庭にプロの洗濯ノウハウを伝える「洗濯家」として活動。「洗濯王子」の愛称でメディア出演も。
[日本経済新聞夕刊2020年7月7日付]
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